筆記



【シンイ二次】雨3

近衛隊の宿舎に戻ろうとする途中に、チェ尚宮は立ちはだかっていた。
先ほど王の間を出るときには、王妃の横にはべっていたはずだというのに
、どうやって先回りをしたのだか。
皇宮の中のことは、針の穴一本のことでも知っている。

人の気配のない回廊を曲がると急に表れた人影に、チェ・ヨンは少し驚いた様子を
顔に浮かべたが、すぐに平静を取り戻す。
庭に面した回廊の外では、いつの間にか雨が降り始め、頭の上の屋根を叩く音が、
やけに大きく響いていた。

「本当に、大丈夫か」
いつものように厳しい面持ちで、優しくもない口調だったが、
叔母が自分のことを心配していることが、チェ・ヨンにはわかった。

「大丈夫です」
「お前の大丈夫はあてにならぬ」
叔母の言葉に苦笑する。
「本当に」
空元気を見せるつもりもなかった。

「先ほど王にも申し上げた」
「なにをじゃ」
医仙に関する報告が終わり、王妃とそれにともないチェ尚宮が下がった後、
王と重臣に護軍として奏上したことを告げる。

「なんという!」
チェ尚宮は言葉を失った。ごくんと息を飲み込むと、胸を押さえ一歩よろめいたが、
すぐに身体を立て直した。
いまは元の領土となっている天穴の地に侵攻し、高句麗の時代の領土を奪取せしめ、
高麗の地とする。
その戦線を開こうというのだ。

「女のために国を争わせる気か」
チェ・ヨンは小さく首をふった。低い声で言い募る。
「これはもとより考えのうち。
徳興君が去り、徳成府院君が亡き者となったいま、元との何らかの競り合いは必須。
先手を打つのです。みだりに触れれば噛み付く獣と思わせなければ」

「惚れた女のために、王を焚きつけたわけではないのだな」
チェ尚宮が念を押すように言い、ほっと肩の力を抜く。
チェ・ヨンの口元に今度ははっきりとした不適な笑みが浮かぶ。

「まあ、それもある」

「不届き者めが!!」
まるで子どものように頭を叩かれて、顔をしかめる。
そして考え込むように、手を壁につく。

「それくらいは」

ぽつりと言う。
「それくらいは、…させてほしいか?」
「さあな」
チェ尚宮から顔をそむけて、チェ・ヨンは言った。

しばし沈黙が落ちる。
叔母と甥は、ただの叔母と甥ではなく、王の尚宮と護軍でもあった。
互いをいたわる言葉も、喉で止まる。

「あの方は生きている」

チェ尚宮が、それだけをチェ・ヨンに向けて言った。
「ああ、生きている」
息でその言葉を温めるように、チェ・ヨンは言った。
ゆっくりと力をこめて、うなずきながら。

また沈黙が落ちる。
「そろそろ、戻らなくては」
チェ尚宮は、王妃のもとに戻ろうと動きかけたときだった。

チェ・ヨンが言う。

「別の時にいて、……そして俺の命のことばかりを考えている」



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by kkkaaat | 2013-09-28 22:16 | 雨【シンイ二次】 | Comments(2)
Commented by 九条友 at 2013-10-01 14:41 x
時空を超えてもなお。互いの愛が伝わります。
ドラマでは、本当に数分で流した場面、
 5年待ったヨンの愛は本物です
Commented by ミチ at 2013-10-01 17:07 x
>九条さん
ほんとドラマでは一瞬でしたね(笑)
ちょっとポカンとしてしまいました。
互いに自分のできる限りのことを相手のためにする、っていうにが素敵ですよね。
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