筆記



【シンイ二次】明日の風1

ドラマの最後ので再び出会えたところからの話です。
3〜4回くらいの予定です。



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大護軍その人が女人と丘から降りてきた。
あろうことか、手を繋いで。

その噂はまたたくまに兵営を駆け巡った。
当初は二千の兵が進軍したこの地も、今では三百の駐屯を残すのみとなり、人数はだいぶん減っていたとはいえ、その日の夕の食事では卓にそろったものがこぞってその話をしていたのは、知らせの伝わるのの速いを褒めるべきか。

チェ・ヨンは丘に来るようになってしばらくしてから、必ず持ってくるようになった荷物を開き、ウンスに頭巾をかぶせ、念入りに男のなりをさせ、兵営には呼びこまず、商人や旅人が泊まる旅籠にウンスを留まらせた。
無理なことだとはわかっていても、まず第一の方策として、医仙の帰還を、誰にも知らせず隠し通すことを、ある時から決めていたのだ。

王にも信頼する迂達赤隊(ウダルチ)生き残りにさえ、秘して、そのままどこかに匿い…。
医仙を表舞台に出してはならない、何度考えても、たどりつく結論は一つだったからだ。

けれどもそのための方策は、あまりにもあっさりと瓦解した。

再会の喜びを味わうことも抑えて、その後のことを手はずするために急ぎ兵営地に入ると、様子がおかしい。
営門の近くに焚かれた火の近くで、迂達赤隊出身の今ではそれぞれに役を持つ身となったものらが幾人かずつ固まって何やら話しこんでいる。
夕餉後の休息の時間とはいえ、夜の訓練に立ちあわねばならぬ者の姿も見える。
何があったか、と声を出そうとしたそのとき。

「テホグン、テホグン! いいいいい医仙は! 医仙がお、お戻りになったとか!?」

最近は少年のような様子も抜けて、少しばかり落ち着きが出てきたと
思っていたテマンが、連絡兵だったころのままに転がるように駆けよってきた。

チェ・ヨンの目が大きく見開かれた。
自制が解けて、思わず、

「どこで聞いた!」

と声を荒げてしまった。

「みみみみんな言ってます。あの、テジャンがおおお女と手をつないで、それで…」

動揺のあまり、テマンは昔のようにチェ・ヨンを隊長と呼んでいた。
チェ・ヨンは強く口を結び、苛立ちを顔に表し息を止めていたが、はああ、とため息をつくと、すぐに平静の表情を取り戻した。
そして、あたりを見回すと、今は迂達赤隊長になっているチュンソクの顔に目をとめた。

「チュンソク!」

こちらへ来いと、目で呼ぶ。
にやついていた兵たちは、大護軍の大声に固唾を呑んで笑いをおさめた。

「は! チュンソクここに。何でしょうか」

チュンソクは思わずに笑んでしまう顔と、どうやら機嫌が悪いらしい大護軍に困惑する顔の中途で、おかしな表情を浮かべている。

「お前だな」
「は?」
「丘のそばに斥候を置いたな。俺を見張らせるために」
「いえ、あの、テホグン、」

うろたえるチュンソクの答えを待たず、まったく、と忌々しそう吐き捨て、チェ・ヨンは考え込む。
あたりは静まり返り、騒ぎを聞きつけて兵舎から出てきた兵たちも遠巻きに様子をうかがっている。

「失礼いたしました。お一人で、とは言われておりましたが、火急のときに備えまして…」

必死に言い訳をするチュンソクの言葉を、軽く手を振ってやめさせる。
そして、もう一度長いため息をついて、チェ・ヨンは肩を落とした。

「まあ、隠し通せるとも思っていなかったがな」

結局第二の策を取ることになるだろうとは思っていた。
自分が隠し通そうとして、隠しとおせるお人ではない、あの方は。
「どうせ、誰かの怪我でも治しちまって結局知れてしまうのだ、きっと、まったく!」
ぶつぶつとつぶやいているチェ・ヨンを、チュンソクが身体を小さくして見ている。

は、と強く息を吐き出した。
それからチェ・ヨンは気を取り直して顔をあげる。
それから横でそわそわと足踏みしているテマンを横目で見た。

「知りたいか」
「はいっ、テジャン!」

勢いこむテマンだけでなく、チュンソクもこくこくと肯いている。
チェ・ヨンは口の端をにやりと持ち上げた。
そして、言った。

「おい、医仙が戻ったぞ」

そして、久しく見せなかったあの頃の笑顔を浮かべる。


一瞬を置いて、周囲からどっと歓声が上がった。




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by kkkaaat | 2013-10-02 19:01 | 明日の風【シンイ二次】 | Comments(7)
Commented by 九条友 at 2013-10-02 00:03 x
うふふ。そうですよね~
そうやすやすと匿えないですよね~(笑
だってウンスだし。
テジャンの心配は尽きることはないのだと~(笑
Commented by アビイ at 2013-10-02 01:24 x
続き楽しみにしてます。
Commented by ミチ at 2013-10-02 11:01 x
>九条さん
あのウンスを隠すのって至難の業ですよね(笑)
まず隠れてくれないし!
ヨンの気苦労がどっと増えそうです。
ウンスはウンスで、大護軍になったヨンのことをたいそう心配して
心配だらけの二人になりそうですよね。
Commented by ミチ at 2013-10-02 11:02 x
>アビイさん
ありがとうございます!
少しずつですが、続きを書いていこうと思います。
Commented by グリーン at 2013-10-02 11:03 x
ウンスがおとなしくしているわけがないですよね。
部下達にウンスが戻ったことを言ったヨン。
ヨンはこれからどうするのでしょう。
先が楽しみです。
Commented by ミチ at 2013-10-02 22:00 x
>グリーンさん
誰かを治療すれば目立たざるをえないし、美人だし、
目立たないとは程遠い人ですもんね、ウンス。
そこらへんはヨンもわかっていたと思います。
だって無理ですもん(笑)
続き、少しずつ書いていきますね。
Commented by yoko at 2013-12-07 23:55 x
一人ほくそえみながら読みつつ、多々いろんなところで、
一人百面相をしております。今日は下記の所にツボイリです。

結局第二の策を取ることになるだろうとは思っていた。
自分が隠し通そうとして、隠しとおせるお人ではない、あの方は。
「どうせ、誰かの怪我でも治しちまって結局知れてしまうのだ、きっと、まったく!」

目の前で私用映写機が廻っていて、くくくっく、笑ってしまいました。

ホントあきませぬ。

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