筆記



【シンイ二次】金銀花6


結局その日のうちに、チェ・ヨンが部屋に戻ることはなかった。

なんとはなしに慌ただしい皇宮の様子に康安殿に立ち入るのも気が引けて、
ウンスは昼すぎからは部屋でぼんやりと過ごしてしまった。
典医寺から借りてきた書物をめくってみたものの、漢字は苦手で目が滑る。

トギの行き先を、チェ・ヨンは知っているだろうか。
都にいる時間の少なかったチェ・ヨンよりも、チェ尚宮の方が知っているかもしれない、
と思い当たる。さっき聞けばよかった、と今更思っても、離れた王妃の寝所まで
行っていいものかもわからない。

部屋に届けられた食事を終えると、あとはやることがなかった。
まだあの人は戻らないのだろうか、と揺れる灯芯を見つめるうちに、
回廊を歩く人の足音も、仕事を終えた女官のおしゃべりの声も静まっていって、
ウンスはいつの間にか、眠ってしまった。



ふと、夜半にウンスは目を覚ました。

気配か、音か、それとも匂いだろうか。
薄く目を開けると、窓の月明かりを背に、このところ見慣れてきた人の影がある。
長外套を脱ぎ、剣を外すと、がしゃと音をたてて置いた。

「ずいぶん遅くまで働いていたのね」

夢うつつのように、ぼんやりと口走ると、人影が振り向いた。

「待っています、とおっしゃったのに」

本気でとがめるのではなく、からかうように、
夜に響かぬよう少しばかり声音を低めて、チェ・ヨンが言う。

「だって、とっても遅かったもの」

伸ばした腕に頭を乗せて、顔を窓に向けて眠気にかすれた声で、ウンスは言った。
乱れた髪が頬にはらりと落ちてくる。

「目が覚めて丁度よかった。起こそうと思っていたところでした」

月明かりが思いのほか強く、窓を背にしているチェ・ヨンの表情は、
ウンスからはよく見えなかった。

こんな夜更けに起こそうと思っていたと意外な言葉を聞いて、
少しばかり意識がはっきりする。
もう出発してしまうの、暗いのに、と手をついて少しだけ身体を起こして尋ねると、
出立までは、まだ数刻ありますと答えながら、寝床の横まで歩み寄る。
角度が変わってちらと見えた表情は、影のせいか疲れが見えた。

「それじゃ、少しだけ休めるわね」

そう言いながら、ウンスが身体をずらして入る場所を作ると、
チェ・ヨンはそこに腰掛けて、上衣を脱ぎながら身体を屈める。
袖に腕を絡め取られながら、顔だけをウンスの唇を寄せて、探るように口づける。
ウンスはチェ・ヨンの肩に手を伸ばして支え、あやすように軽く応えたが、
それでは一向におさまらず、チェ・ヨンは自由になった片手でウンスの肩を押さえると、
口づけは噛みつくかのごとく深くなった。

下衣も片手で脱いでしまうと、夜着も身につけずにウンスの横に滑りこむ。
寝たほうがいいと思うけど、と言いながら、ウンスはチェ・ヨンの首に手をまわす。

「寝ずにまいります」

ウンスの夜着の裾を割って、脚に手を滑らせながらチェ・ヨンはそう答えた。
腿の横で手を止めると、指に力をこめる。
火の灯らぬ部屋で、ウンスを覗きこむ瞳は黒々として、
熱病にでも浮かされたようだ。

「十日ほども会えませぬ。一刻やそこら眠るなど、どうでもいい」

肌に指の先が触れ、撫でられるだけで、甘い痺れる感覚が爪先に向かって流れる。
慣れぬ感覚にウンスはかすかに身体を緊張させた。
感じとったチェ・ヨンが少しだけ動きを止める。
どうしました、と優しく問われて、
まだあなたとこうするのに慣れてないだけ、とウンスは答える。
肌に触れられることも、肌を見られることも、さほどの経験があるわけでもなく。

「慣れて飽きるほど、毎夜こうできれば」

唇を触れ合わせたままで、チェ・ヨンは、もどかしげにそう言った。
固く結ばれた帯を解こうとして、絹に手が滑り、チェ・ヨンが忌々しげに
舌打ちをする。ウンスが笑いながらわたしがするわ、と解こうとすると、
その手を払って、帯は結んだまま胸の打ち合わせを無理に開いた。

ウンスはその性急さが可笑しくて、待って、と言うが、
待てませぬ、とチェ・ヨンは言って胸の間に舌を這わせた。

そのまま白く柔らかい腹を通って、小さな窪みに舌がたどり着くと、
チェ・ヨンは何やら嬉しそうに息を吐いて、二三度猫がやるように舐めた。
くすぐったさにウンスが身をよじると、そのまま腰を引き寄せて、脚を割る。
チェ・ヨンの腕の力は強くて、ウンスは軽々と動かされてしまう。
ウンスが髪に指を絡めると、チェ・ヨンは柔らかな脚の内側に歯を立てた。

猫でなくて虎だわ、とウンスは気づく。

それからチェ・ヨンは身体を起こし、ウンスに覆いかぶさった。
目を開けてください、とささやかれてウンスは目を開く。
自分を見るウンスの瞳をじっと覗きこみながら、チェ・ヨンは中に分け入る。
片足を抱え上げ、反対の手は肩に回して乱れた夜着ごと強くつかむ。
そうやって、できるだけ、というように深く繋がった。

まだ数度で馴染み切らぬ身体を、できる限り近く寄り添わせたい、
とでもいうように引き寄せる。

食い入るように自分を見ながら動くチェ・ヨンに、ウンスも目を奪われた。
揺すぶられながら何度も口づける。

「あなたのことばかり、考えてしまう」

ふと口走ったチェ・ヨンに、ウンスはこっそりと、わたしも、と答えると、
チェ・ヨンはひどく嬉しそうに息を吐いて笑い、また、没頭した。



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by kkkaaat | 2013-11-02 20:09 | 金銀花【シンイ二次】 | Comments(19)
Commented by グリーン at 2013-11-02 21:32 x
ヨンの熱情が伝わってきそうです。ウンスとの悦びを知ってしまったヨンには十日ほども会えないのはつらいでしょうね。「慣れて飽きるほど、毎夜こうできれば」・・ヨンの口からこんな言葉が出るほどウンスに溺れ、離れるのがつらいのですね。ヨンの「男」を見ました。虎のヨンも魅力できです。あ~この分じゃ十日も離れて、帰ってきた時が怖いですね。
Commented by aki at 2013-11-02 22:30 x
毎回、楽しみに拝見しております。
ヨンのウンスに対する熱い想いが感じられる熱を帯びた内容ですが、やはり、原作本の続編かと思うような重厚な仕上がり。
肉感的な表現もむしろ、これだけ上品に仕上がるんだなと、毎回、感心しております。
ドラマがプラトニック的だとすれば、このように、愛する人と情を交わす、交わしたいって言う、人として愛する人同士としての表現を「文章」として拝読でき、嬉しい思いです。
新婚の頃を思いだしつつ・・・
そして、ヨンを思いつつ・・
熱い夜を楽しませていただいてます。
Commented by ちび at 2013-11-02 22:52 x
素晴らしい~
夜の営みの表現は、難しいかとおもいますが、淡々と、情熱的な文章に、私が、ウンスになってしまいました。(^^♪
Commented by くまみや at 2013-11-03 00:12 x
10日ほどと言っても 危険を伴うことも多いはず。ウンスに対しては 比較的穏やかなヨンが、
性急に少し乱暴にかき抱く感じが とても情熱的でした。いつも素敵なワールドをありがとうございます。
Commented by 比古那 at 2013-11-03 00:27 x
忙しそうだと気が引けますね。
帰ってきてはみたものの、四年も違えば勝手も違う。

思わず、あぁチャン侍医かいれば、あぁ、トギがいればと考えてしまいました。

知らなければ寂しさも感じずにいられたのに。

…と思いきや。

濃厚でした。欲しすぎてしかめ面のヨンが可愛い。朝までにさぞ艶めいた大護軍が出来上がっていることでしょう。

うーん、こんなに忙しい人だったなら、天穴で襲い(捧げ物?)に行ったウンスの判断は正しかったと思わざるを得ません。

初めて床を共にするのがこの日だったなら気の毒すぎる。その分晒し者にはされなかったかもしれませんが、逢い引きすらままならなかった二人ならそれは致し方なしとまわりも気遣ってくれたのでよし。

10日、長いですね。着いていっちゃ駄目かしら。

宮中だと沈んでしまいそう。トギを探しに行っておいでと言いたくなります。
Commented by at 2013-11-03 01:09 x
此のままじゃ生殺しだぁ~と、次話に飢えていた欲求は取りあえず納まりました!!
毎回ソン・ジナ氏が化けて書いてるんじゃ??と思う話にのめり込んでおります。二人の夜話がこんなに素敵に書かれて…かえって次回が心配!まさか何かが起きるんじゃ~Σ( ̄□ ̄)!
SBSが買わないですかねぇ!?
お話から海を渡っておいでのご様子、ご無事のお帰りお祈りします。
そして、は・は・は・は早く次話を~(T^T)お願いします。携帯が擦り切れる前に!!
Commented by チェにゃん at 2013-11-03 18:52 x
あなたのことばかり、考えてしまう・・・・・・
あなたのことばかり、考えてしまう・・・・・・
ハイ わたしもです。あなたから当分抜け出せません。
ウンスが大人で素敵でした^^
Commented by 琥珀の月 at 2013-11-06 04:42 x
読みながら私は呼吸をするのも忘れてる

心臓はドクドクと高鳴り、体温が上昇していく

「あなたのことばかり、考えてしまう」
チェ・ヨンが囁くと同時に

やっと大きく一呼吸ついた私・・・

たった数行だというのに、なんて上質な艶話しなんでしょう .。.:*☆
Commented by ナナ at 2013-11-06 22:54 x
十日…長いですよね。
やっと逢えたのに また離れ離れですもの。
一緒にいられない分、より一層 情熱的な時間に感じられました。
「あなたのことばかり、考えてしまう」
…素敵です(○v艸v*)
Commented by kkkaaat at 2013-11-08 15:23

>グリーンさん
お読みいただき、ありがとうございます。
ヨンの「男」を見た、と言っていただけて、嬉しいです!
寡黙な中にかわいい表情を垣間見せるヨンですが、いざというときは
惚れ惚れするほど男らしいですもんね。
帰ってきたときは、推して知るべし…(笑)
Commented by kkkaaat at 2013-11-08 15:27
>akiさん
楽しみにしてくださって、本当にありがとうございます。
褒められすぎて、私がどうにかなりそうです(笑)
ありがたや、ありがたや~!!
二次小説につきもののいわゆる濡れ場、ラブシーンですが、
まあぶっちゃけここを書くために書いているといっても過言ではありません(笑)
ただ、意味のない場面にはしたくないし、この二人だからこその
そういうシーンになっているといいな、と思いながら書いています。
愛する人と情を交わす、そういうふうに受けとめてもらえたなら
本当に嬉しいです。
Commented by kkkaaat at 2013-11-08 15:30
>ちびさん
うれしい~(*´∀`*)
ほんと難しいです(笑) 特にここブログでフルオープンなので、
生々しいのはまずいでしょうし。
そういう印象で読んでいただけたのなら、とても嬉しいです!
わたしもウンスになりたいわ…!!
Commented by kkkaaat at 2013-11-08 19:51
>くまみやさん
この時代、どこに行くにも行かせるほうは心配ですよね。
気丈にふるまっても、兵を送り出す女性は覚悟がいったろうな、と思います。
>性急に少し乱暴にかきいだく
この文に私が萌えてしまいました(笑)
こちらこそありがとうございます!!
Commented by kkkaaat at 2013-11-08 21:48
>比古那さん
そうなんです、ウンスにとっては一年でも、高麗では4年。
4年というのはやはりかなり長いと思います。
本当に、チャン侍医がいればねえ…。
医療に対して志のある方でしたから、ウンスから学びたかったでしょうし、
ウンスは導いてもらえたのになあ、と思います。

まあこの話の本題は、濃厚なほうでしたね(笑)

ヨンの色気はすごいですよね。私久しぶりにこういう天然色気パワーの持ち主を
見た気がします。

忙しさですが、たぶん本来なら戦場や兵営にずっと詰めているような
生活なのかな、と想像しています。あまり平穏無事な時代ではないですし。

キチョルが史実より5年ほど早く死にましたから、シンイワールドでは、
少しだけ余裕がありそうではありますが。

ウンスこの皇宮でお初は落ち着かなさそうですよね(笑)
まあ愛し合う二人なら、どこでもいいんでしょうけど!
Commented by kkkaaat at 2013-11-08 21:52
>ぴさん
話もコメントもお待たせしましてすみませんでした!
6話で欲求がおさまって、本当によかったです(笑)
のめりこんで読んでいただいてるなんて、とっても嬉しいです!

夜話気に入っていただけるとやっぱり嬉しいですね、こういう場面を
書きたいがために他の場面も書いてるとも言えるので(笑)
無事に帰宅し、今週来週はわりとのんびりです。
今のうちに一気に金銀花を終わらせます!
Commented by kkkaaat at 2013-11-08 21:56
>チェにゃんさん
あははははヽ(*´∀`)ノ
ね、わたしもそうです!!! そうです!!
もうヨンと高麗のことばっかし考えてます。
これって恋かしら…(キモっ)
ウンス、素敵に書けていたなら嬉しいです。綺麗なお姉さんですもんね。
Commented by kkkaaat at 2013-11-08 22:00
>琥珀の月さん
こういうふうに読んでもらいたいなあ、と思ったように
読んでいただけたんだと知って、感激です。
私も二次小説読んで、そういう場面に出会えると、
本当に嬉しいですから。

心がときめく場面をもっともっと書いていければいいなあ、
と思った瞬間でした。
ありがとうございます。
Commented by kkkaaat at 2013-11-08 22:06
>ナナさん
十日、普通だったらたいしたことないですが、
再会してまだ半月強といったところ、そこで十日はきついですよね。
なかなか落ち着いて一緒にいられない中、合間を縫ってでもどうしても
側にいたいんじゃないかな、と思います。
書きながらチェ・ヨンくん、真面目に仕事しなさい、と言いたくなりました(笑)
たぶん仕事はきっちりこなしながら、それでもふと考えてしまうのを頭をふって
振り払って、とやってるヨンを想像してます。

脱線しますが、今急に、受験勉強中なのに、彼女出来立てで勉強に集中できず
「うっあぁぁ~」となってるヨンが目の前に浮かびました。
ヨン、高校生レベルか(笑)
Commented by グリーン at 2014-01-04 15:45 x
ヨンの男の色気。ミチさんも「天然色気パワーの持ち主」とおっしゃってますが本当に、それもむんむんの男くささじゃなくさわやかさもある色気なのですね。

ウンスを待つ4年の間、恋しい人を一途に想い、待つ。それが男の色気にもなっていて、そんなヨンて女性から見ればすごい魅力なんだろうなと。ヨンにその気がなくても女がほっとかない。モテたんだろうなぁ。もちろんヨンは揺るがなかったでしょけど。

ウンスが帰って、女性からのウンスへの嫉妬とかはなかったのでしょうか。 ま、あったとしてもヨンが守り切ってるでしょうけど。
ヨンの想いを一身に受けるウンスは羨望の的だったでしょうね。
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