筆記



【シンイ二次】金銀花11

総管の肩ごしに、王はチェ・ヨンと目を合わせ、微かに口の端を上げた。

「長旅でお疲れでしょう。城内へお入りください。ゆっくりと酒肴なさるとよい」

王がそう勧めると、内官が進み出て案内に立つ。
さあこちらに酒宴の用意ができております、と誘われて、趙小生は虚ろに首を振った。

「歓迎の意、ありがたくお受けしたいのですが、今はとにかく一刻も早く横になりたく…」

趙小生は足が萎えたようになって、歩くのもおぼつかない様子だった。
そうですか、それは残念至極、明日またお目にかかりましょう、
王はそれだけ言って、双城総管府の一行を城内に入らせた。
彼らの姿がすっかり見えなくなると、兵たちの密やかな歓声があたりから漏れる。
王のもとへ、チェ・ヨンが駆け寄る。
二人の目が合うと、チェ・ヨンは深くうなずいた。

「チョナ!」

チェ・ヨンの声が、思わずに弾んだ。
おやりになりましたね、と言うと、祭天なぞ初めてのことゆえ、
胸が早く打って困ったぞ、それらしくできたかどうか、と王も笑いながら言った。
あやつら、震え上がっておりました、とチェ・ヨンが言うと、王が言葉を返す。

「テホグン、チェ・ヨン。そちも見事な芸当であった」

そう言われて、チェ・ヨンは急に厳かな表情を取り戻し、頭を下げる。
俺はただ、雷功を空から落としただけでした、とチェ・ヨンが言った。
その光で龍を形作るなど、到底無理な芸当、と王の目を見据えて言う。

「稲妻の加減でそう見えたに違いない」

王がそう言うと、チェ・ヨンは首を振った。
ほかの者も驚いていました、龍が天より降り立ち王の身体に入ったと。
王は夜天を仰ぎ、考えこむように視線を戻した。
天の助けか、とぽつりと王はつぶやく。

「迷信深い趙小生、たいそう参っている様子でございました。
朝貢をはねつけても、しばらくは怯えて兵を出すこともためらうでしょう。
元国に便りをするでしょうが、それも急ぎではしますまい」

報告を受けたとて、今は漢族が暴れておる、あの荒れようでは、
すぐにこちらに手を打つこともできないだろうて、と王が言う。

「あと一年、一年あれば、戦の準備が整います。まずは双城総管府を陥落させ、
故地(以前は高麗であった土地)をすべて取り戻したく」

チェ・ヨンの言葉に王は力強くうなずく。
それから、とチェ・ヨンは付け加えた。

「一行の中に趙小生の叔父の趙暾、また李子春、李成桂の親子がいたのにお気づきでしたか」

ああ、気づいておった、と王はうなずく。
確か前に医仙が李成桂の腹を切って病を取り除いたのではなかったか、
と王が言うと、その通りです、チェ・ヨンもうなずく。

「この三名、雷の落ちたる後も、さほどうろたえもせず、
じっとチョナと趙小生のやりとりを見ておりました」

こたびのことをどのように受け取ったかはわからぬが、ものごとを見聞きして、
風向きを読むほどの人物ではありそうです。李親子は王城での恩もある。
こちらの陣営に引きこむことができれば、チェ・ヨンは力強くそう言った。

チェ・ヨンがそう言うと、王は、賂か、それとも位階を与えるか、
とぶつぶつと考える様子を見せる。
チェ・ヨンが傍で黙って控えていると、はっと気づいて顔を上げた。

「すまぬ、気が急いてな。それより、火の始末をさせ、兵士たちを休ませよ。
この数日ろくに寝てもおるまい」

そう言うと、チェ・ヨンは気遣わしげな顔で、王を見た。
それはチョナも同じでございます。明日に備えよくお休みください、
とチェ・ヨンが言うと、王はふうと息を吐いて、疲れの見える顔を
それでも晴れ晴れと微笑ませた。

「明日は縮み上がった趙小生と、少うしばかり決めごとをするだけじゃ」

それさえすめば、とチェ・ヨンが切望をにじませた声で言う。
チェ・ヨンの声にそれを聞きつけて、王がうなずく。

「開京へ戻ろうぞ」

王は南を向いて、そう言い放った。



にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村
by kkkaaat | 2013-11-08 21:41 | 金銀花【シンイ二次】 | Comments(10)
Commented by 比古那 at 2013-11-08 22:04 x
あー、やっぱりソンゲ達は侮りがたし。

スカッとしました。すこしばかり私が爽やか使用になりました。

気が急くのも他人事ではなく。

早く愛しき奥方に会わせてあげたい金銀花。
Commented by pekoe at 2013-11-08 22:53 x

爽快なお話でした(*^^*) ありがとうございます。

ソンゲが朝鮮を建国する話『龍の涙』を前に見ましたので…そちらは、ファンタジー系じゃないので、最後まで見るのがちょっと辛かった覚えがあります(^^;;
ヨンは、早くウンスに会いたいでしょうね(*^^*)
Commented by グリーン at 2013-11-08 23:01 x
ヨンとウンスのラブストーリーだけじゃなく、壮大な物語です。
次々と頭の中に映像が浮かびます。

ソンゲ親子、この後どう出るのでしょう。
早くウンスのもとに帰りたい・・・
ヨンの切望。。王様も同じ思いですね。
Commented by saikai at 2013-11-09 01:04 x
ミチさん、こんばんは。
これが、お話だという事を忘れてしまいそうになるくらい、
チョナ(改めペハ?)が偉大な王であることにわくわくしてしまいました。
あのチェヨンが思わず興奮しちゃった位ですもの。
ヨンがウンスの事以外で、興奮しちゃうのって初めて?笑

チョナもヨンも、自分の帰りを待つ大切な人を思い浮かべて眠りにつくのですね。
ああ、早く会わせてあげたいです。
Commented by ナナ at 2013-11-10 01:56 x
上手くいきましたね。
かなりの役者だわ〜。
皆 心躍らせたでしょうね。
ソンゲ達が少し気になりますが…
やっと愛する人のもとへ帰れますね。
Commented by kkkaaat at 2013-11-11 10:16
>比古那さん
スカッとしましたか? それだと本当に嬉しいのですが。
もう書いていて、妄想全開すぎてわけがわからないだろうな~、
でももういいや~、書いちゃえ~、あははは( ´∀`)~って
感じだったので。
ソンゲくん、まあ始祖ですからね、さすがに賢い青年です。

比古那さんのコメントを読んで、私も少し爽やか仕様になりました~!

金銀花、ようやく終わりにこぎつけて、今更のコメントお返事ですが、
本当にありがとうございました。
Commented by kkkaaat at 2013-11-11 10:17
>pekoeさん
爽快なお話、と言っていただけてすごく嬉しいです。
ソンゲやチェ・ヨンが出てくるドラマ、ほかにもあるみたいですが、
見るの、ちょっと勇気がいりますよね。
絶対イメージ違うから(笑)
あ、でも私年配ダンディー大好きなので、うじゃうじゃしてれば
乗り切れるかも。

金銀花、ようやく終わりにこぎつけて、今更のコメントお返事ですが、
本当にありがとうございました。
Commented by kkkaaat at 2013-11-11 10:17
>グリーンさん
シンイというドラマ、もちろん主軸はヨンとウンスのストーリーですが、
王の成長、チョ・イルソンの乱やキ・チョルの乱などの史実とのからみなど、
いろんな要素がからまって面白いなあ、と思ったので、
二次でも頑張って絡めてみました。
いやあ、力不足でちょっと苦戦しましたが、読んでいただけて報われた
気持ちです。

ソンゲ親子、次のお話でも出て来る予定です。

金銀花、ようやく終わりにこぎつけて、今更のコメントお返事ですが、
本当にありがとうございました。
Commented by kkkaaat at 2013-11-11 10:17
>saikaiさん
saikaiさん、おはようございます!
いろいろと力不足で書ききれない部分も多かったのですが、少しでも
わくわくしていただけたなら、本当に嬉しいです!
ヨンもうまくいくか、それなりに不安でしたでしょうから、思わず
興奮してしまいました。
っていうか男って男同士だと、けっこうアホなことで盛り上がったりする
ので、そんな感じでしょうか(笑)

金銀花、ようやく終わりにこぎつけて、今更のコメントお返事ですが、
本当にありがとうございました。
Commented by kkkaaat at 2013-11-11 10:17
>ナナさん
うまくいきました~!
ドラマの最初のほうで、チョナが皆の前で胡服から韓服に着替えるシーンが
ありますよね。あのシーンが好きで好きで、それやりたいなあ、という発想
でした。
ソンゲたち次の話でまた出て来る予定です。

金銀花、ようやく終わりにこぎつけて、今更のコメントお返事ですが、
本当にありがとうございました。
<< 【シンイ二次】金銀花12 高麗メモ1 高麗の軍組織~テジ... >>

二次小説。いまのところシンイとか。
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新の記事
カテゴリ
記事ランキング
最新のコメント
ウンスノートから読んでし..
by 比古那 at 13:31
あー、やっとたどり着けま..
by 比古那 at 10:48
みちさん お元気でしょ..
by mm5210 at 12:59
更新を待ってるの
by やっちゃん at 07:58
更新を待ってるの
by やっちゃん at 07:58
ブックマーク
以前の記事
検索