筆記



【シンイ二次】颶風26



テマンが作った仮小屋の中には、仮拵えの小さなかまどもしつらえてあった。
鍋釜など本当に最低限のものしか置いてはいないし、筵が敷いてあるだけで寝床もない。
幸いなことに、テマンは火口を残していってくれており、ウンスは急いで火をおこすと、
雨水のたまった水瓶から、鍋に水を移した。
チェ・ヨンは筵の上にあぐらをかいて、少しぼおっとした様子で、ウンスの立ち働く姿を
ただただ眺めている。

ウンスはできるだけ大きく火を焚いて、鍋に湯を沸かした。
小屋の片隅の荷物を漁ると、チェ・ヨンの分の衣が数枚と、自分の衣がひと揃い、
きちんと畳んで小布で縛って置いてあった。

小布をほどいて、自分の雨で濡れた髪を拭うと、少し気分がよくなった。
湯にひたして、顔を拭う。
それから鍋をチェ・ヨンの側に運んだ。
不思議そうに自分を見るチェ・ヨンの前で、小布を湯に浸して絞り、顔をぬぐってやる。
チェ・ヨンは一瞬顔を微かに引いたが、温かな布が頬に触れると、何も言わずに力を抜いた。
目の周りを拭いて布をどけても、落ち窪んだ目の下の濃い隈はそのままで、
ウンスはそっと指でそこに触れる。
上衣を脱がそうと紐を解くと、チェ・ヨンは驚いたように身頃をつかんで止める。
ウンスはわざと明るく言った。

「さあ、こんな垢だらけでは男前が台無しよ。きれいにしてあげるから」

自分でできます、とチェ・ヨンはぽつりと言ったが、ウンスは、わたしがやってあげたいの、
とチェ・ヨンの手を自分の手で押さえた。
身頃をつかんでいた手が緩み、そのまま力が抜けて、あぐらの膝に落ちる。
ウンスは上衣を脱がせると、下衣にも手をかける。今度こそ本当にチェ・ヨンは少し驚いて、
ウンスの手首を急いでつかむ。

「大丈夫よ、下帯まで脱がそうってんじゃないんだから」

そう言うと、チェ・ヨンは不承不承だが、ウンスに従った。
もう一度布を湯に浸して、まず背中に回ってぬぐいながら、ウンスは目に浮かんだ涙を
なんとか隠し通した。張り詰めていたような背中が少し痩せて、骨が前よりもよく見えた。
あんなにも力強かった肉が、ウンスにもわかるほど細くなっている。
がっしりとした体つきは変わらないが、ろくに食べていなかったのだろう、
皮膚にもあまり艶がない。

何も言わずに、ただ何度も湯に浸しながら、身体を拭き続ける。
肩をほぐすように拭いて、肘の内側の汚れをぬぐうと、チェ・ヨンは申し訳なさそうに
ウンスを見た。手の指の爪が垢じみていて、ウンスは思わずその手を引き寄せて、
頬に当てた。
目をつぶって、じっと手の感触を味わっていると、もう片方の手も頬に当てられて、
頭を引き寄せられる。目を開けると、間近にチェ・ヨンの目があって、
それがつむられると唇が押し付けられた。
ただじっと何か耐えるように口が合わさって、しばらく身じろぎもせずに触れ合った後、
静かに離れた。ウンスは微笑んで、それからまた手を動かす。

首を拭うと、気持ちがいいのか、チェ・ヨンがふうと息をつき、見ると
顔色もいくぶんよくなってきている。ようだった。

「ねえ、気持ちいい?」

ウンスが落ち着いた声で尋ねると、チェ・ヨンはしばらく黙っていて、
それから、低い声で言った。

「…生き返るようだ」

痩せたとはいえ、大きなチェ・ヨンの身体を清め続けて、ウンスの額にうっすらと汗が浮かぶ。
小屋の中は、かまどに勢いよく焚かれた火によって、まだ早い春の外の寒さを忘れるように、
暖まってきた。
ウンスはチェ・ヨンの身体の前に回って、鎖骨から胸と、へこんでいる腹を拭う。
こんなふうにまじまじと、チェ・ヨンの身体を見たのは初めてのことだ。
診察させてくれと言っても、けっこうと断られるばかりだし、寝屋ではそんな余裕もない。
じっと自分を凝視するチェ・ヨンの眼差しに、ウンスは申し訳なさとともに、
身の置き所のないような気持ちに襲われる。

顔が赤らんでいくのがわかったが、手を止めるわけにもいかず、ただ手を動かし続ける。
つい、とチェ・ヨンの手が伸びてきて、ウンスの後れ毛をかきあげた。
それから、先ほど拭き清めた指が、額の汗を拭う。
その探るような触れ方に、ウンスは余計に赤くなるのがわかったが、どうしようもない。

「なぜ、そのように顔を赤らめていらっしゃる」

チェ・ヨンがわずかに面白がるように、そう言った。

「あなたがじろじろ見るから。それと、こんなふうに男の人の身体を
触ったりするの初めてだからよ」

照れくさくて固い口調で早口で言うと、チェ・ヨンは再び会って初めて、少しだけ笑った。
それから急にウンスの腕をつかんで、ゆっくりと反対の手で布を取り上げた。
腕を引かれて、膝の上に招かれる。
腰に手を回されて、さらに身体を近づけて、チェ・ヨンはゆっくりと唇を重ねた。
ウンスの中に熱を探すように、じれったいほどゆっくりと、さぐる。
チェ・ヨンの濡れた髪から雫が、ウンスの胸元にぽつりと、雨のように落ちて流れこんだ。
その行方を追うように、チェ・ヨンは口を離し、胸元に顔を埋める。
濡れて温かな感触が、胸の谷間まで降りて、止まった。

それから、チェ・ヨンはウンスを持ち上げて、筵の上に座らせる。

「脱いでください」

背中を向けたまま、チェ・ヨンに言われて、ウンスは戸惑う。
あとは自分でいたします、と言うとチェ・ヨンは遠慮もなく下帯を取って、
自分で布を濡らすと、立ち上がって残りの部分を手早く清めはじめた。
長い脚はやはり少し痩せていたが、腰周りも脚も、それでもしなやかさはそのままだ。

ウンスが急に言われて動けないでいると、チェ・ヨンが首だけ振り返り、微笑んだ。

「あなたと、肌をあわせたく」

そして、小布を湯に投げ入れると、くるりと向き直る。
ウンスは照れくさくて急いで目を下げると、口を引き結んで、急いで衣を脱ぎ始めた。
チェ・ヨンはまたあぐらをかくと、脱ぐのを手伝うように手を伸ばしたが、
結局ウンスが真裸になるまで手を出さなかった。

チェ・ヨンはウンスを待って、そのまま筵に二人で横たわった。
火の勢いは少し弱まっていたが、もう小屋の中は十分に暖かかった。
チェ・ヨンは肘をつくと、薪をとってかまどに投げこみ、またウンスの方へ身体を戻した。
そしてウンスの傍らに寝そべる。
ウンスの腕を引き寄せて自分の身体の上に手を置かせ、ウンスの目を間近に覗きこむ。
自分もなだらかにへこみ盛り上がる、腰のくびれに手を置いて、確かめるように手を押しつける。
そのまま、ウンスを見ている。
なあに、とウンスが息声で問うと、見ているのです、と言う。
それから、腰に手を回して抱き寄せた。

口づけは長く、緩やかに続いた。
まるで話でもするような気安さで、それでもただ唇を合わせるのではなく、
熱っぽく舌を絡せたりもする。
ただ何か、我を忘れてしまうのが恐ろしいような気がして、
チェ・ヨンは先に進まずに、口づけだけを繰り返していた。

それでも身体は次第に熱を持ち、チェ・ヨンはウンスの腰をさらに引き寄せて、
ウンスの脚を自分の脚に絡ませる。
チェ・ヨンが恐れるように淡々しく押し当てると、深く身体に触れもせぬのに、
ウンスの身体は柔らかに整っていて、チェ・ヨンの高ぶりを包むようにのみこんだ。
じりじりとするほど鈍く分け入ってくるのに、これまでの穏やかさを吹き払うような
熱さを感じて、ウンスはぎゅうとチェ・ヨンにしがみつく。
あ、あ、と小さく声を出すと、ウンスの腰に回されたチェ・ヨンの手が
指が喰いこむほどに力がこもった。

ゆるりと始まったそれだったが、温まった肌が擦れ合うと、たちまちチェ・ヨンは
頭に血をのぼらせて、ウンスを下に組み敷いた。
チェ・ヨンはつかみかかるように、ウンスの乳房を鷲掴みにした。
ウンスの髪はひどくもつれ、汗が額や首をうっすらと濡らしている。
小さくなってきたかまどの炎にぼんやりと浮かび上がるウンスの身体は白く、
ゆわゆらと影がその上で形を変える。
チェ・ヨンはウンスを押えこむようにして、手荒なほどに強く打ち付ける。
肌を打ち付ける音と、濡れた部分が交じり合う音が、
小屋が風と雨で軋むがたがたという音と混ざりあう。

ウンスは切れ切れに、声をあげて、何度も身体を弓なりにさせる。
チェ・ヨンはウンスに合わせることもできず、ただ夢中で、溺れている。
ウンスのくったりと力の抜けた身体に、最後に精を放ったとき、
チェ・ヨンは荒い息がまるで止まったようになって、
びくりと身体をひきつけると、ぐったりと柔らかな身体の上になだれ落ちた。




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by kkkaaat | 2013-12-17 00:27 | 颶風【シンイ二次】 | Comments(6)
Commented by pekoe at 2013-12-17 01:03 x
「戻れなかったら、あの人に待っていてね、って伝えてほしいの。
いつか絶対に会えるからって。」とテマンに言い残し天門に消えていったウンス。

大丈夫だ。必ず俺の元に帰ってくる...頭では分かっていても、期限なく待つほうはどれだけキツかったことか...

でも、今、すぐ目の前に愛しい人が手の届く場所にいる。幻ではなく、ウンスの香りがするすぐ傍に。

やっと、やっと、やっとですね...(涙)。
甘々な二人を早く見たかったから。ミチさん、ありがとうございます。
Commented by aki at 2013-12-17 01:06 x
この二人が肌を合わせることが出来て、ほんと、あたしも幸せです。
なんとしても、ヨンには、ウンスを抱かせてあげたかった。
どれほどの思いで、ウンスを待っていたかと思うと、ヨンには、毎晩ウンスを抱かせたいくらい。
ヨン、ウンスを愛してるんだなーって、しみじみ…
あー、でも、ほっとした。
Commented by 比古那 at 2013-12-17 01:19 x
あれ、一話飛んでました(;´д`)

もう一回読んでこようと最終27話にかきましたが、その前に読み終わってなかった。

25、27、26という変則的な読み方だもので、 なぜあんなに穏やかだったのか?と不思議に思っていたものが今ごろ解消。

修行し直してきます。
Commented by チビママ at 2013-12-17 01:24 x
本当に良かった…(;_;)。
ヨンの絶望感が、痛いほど文面から伝わって来て、生きながら死にかけてるのが、
辛かった。
ウンスが全ての人ですものね。
ウンスもそうですけど…。
強い男の涙って、胸打たれました。
本当に、この物語は凄いとしか言い様がありません。
感動しました。
残り僅かとの事ですが、次が読みたくて待ち遠しいです。
でも、無理はしないで下さいね。
Commented by トナン at 2013-12-17 04:40 x
まるで最初の再会の時のようですね(*^^*)
ヨンはウンスがまた消えてしまわないか…目の前にいるのがホントにウンスなのか…夢なのか…っていう心境なのでしょうか…2人繋がって初めてウンスを実感できたのでしょうかね(*^^*)

この時代の男女って夫婦になってもお互いの裸を見ないもんなんですかね?

一緒にお風呂なんて入らないんでしょうね(笑)
Commented by グリーン at 2013-12-17 15:15 x
ひとつになってようやく生気が戻りウンスがそばに居ると思えたのでしょうね。

「あなたと、肌をあわせたく」・・ヨンらしい言い方に少しホッとします。
それでも恐る恐るしかできないヨンに今までの絶望感がどれほどのものだったのか、、心が痛みます。
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