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筆記



【シンイ二次】火、狩人8

バンの扉がスライドすると、まずチュンソクとトクマンが素早く飛び降り、
あたりの様子を伺った。狭い扉に身体をねじ込むようにして、チョナを
かばうようにしてチェ・ヨンも足を踏み出す。

「テマン」

チェ・ヨンは低くそう言うと、助手席の青年は身軽に後部座席を飛び越えて、
こんこんと眠る女性の横に膝をついて控えた。
最後にチョナが、ゆっくりと道路に足を下ろす。
その硬く平らはな感触に、足元に視線をやり、ならされたアスファルトの
うえで足をかすかに動かして確かめる。
おもむろに顔を上げたチョナが口を開く。

「ここが、そなたの屋敷か」

チョナがそう尋ねると、ドアに向かいかけていたウンスが振り返る。
腰に手を当てて、少しだけ顎を上げる。

「そうですけど!」

この年齢の女性が、事務所付きの一軒家を買うのは、
そうそうできることではない。

「仕事場もかねた住居なの。いわば、わたしの城、ってとこかな」

ウンスはチョナの口から何かしら褒め言葉が出るのを当然のように待って、
片頬を得意げに少しだけ上げた。

「そうか…」

眉を得意げに上げ下げするウンスの顔を、城? とかすかに眉をひそめて見ながら
チョナが黙っていると、チェ・ヨンが目顔でチュンソクに合図を送る。
チュンソクがウンスを押しのけるように一階の事務所部分についている
ガラス扉に近づき、数秒不思議そうに中を覗きこみ、ドアノブを引く。
ガタガタと揺れるドアを見て、ウンスが慌ててかけよった。

「ちょっとお、そこのヒゲ男、勝手に触らないでよ! 
鍵を開けてないんだから、開くわけないでしょ!」

ひ、ヒゲ男…っ、と目を見開いてウンスを見ながらつぶやくチュンソクを
今度はウンスが押しのけて、鍵を開ける。
鍵ががちゃりと回るやいなや、チュンソクがウンスをさらに押しのけ返して、
先に事務所の中に足を踏み入れた。

「な、なにすんのよ!」

と文句を言いながらドアをさらに開けるウンスを突き飛ばすようにして、
チェ・ヨンが中に押し入る。

「ねえねえ、ねえ! ここわたしの家なの。勝手に入らないでよ!
ちょっと、あんたたち失礼じゃないの!!」

ようやくチェ・ヨンに続いて中を覗いたウンスの口から悲鳴めいた声が上がった。
車から降りてきたチャン・ビンが足早に駆けよる。
どうした、とウンスの後ろに立ったチャン・ビンが尋ねる間もなく、
ウンスの口から怒声が上がる。

「靴を脱いでよ!」

土足は事務所まで、奥の部屋はちゃんと脱いで! と言いながら、
ウンスも事務所の中に入ろうとすると、戻ってきたチェ・ヨンにまた
押し返される。
後ろによろけてチャン・ビンにぶつかり、なんとか転ぶことはなかった
ウンスは両手の拳を握りしめて、わなわなと言葉を失っている。

「チョナ、屋敷の中に人影はなく、安全です。
ワンビママをお連れしますので、先に中へ」

チェ・ヨンがそう告げると、むさくるしいところですが、
どうぞお入りください、とチェ・ヨンに変わってチョナの前で周囲を
うかがっていたトクマンが扉へと手ですすめる。
うむ、とチョナがうなずくと、チェ・ヨンが開けている扉を
物珍しそうに眺めながら足を踏み入れる。

「む、む、むさくるしい…ですってえ」

震える低い声が、ウンスの口から漏れたが、
この時代錯誤な男たちは、屋敷の持ち主をまったく無視して中に入ってしまった。

「ウンス」

まずは怪我人を運ぶのが先だ、とチャン・ビンの落ち着いた声がして、
後ろから慰めるように肩をぽんぽん、と二度叩かれる。

「今だけ、今だけよ…落ち着いたら、すぐに出ていってもらうんだから…!」

ウンスはぎゅっと拳を握り直すと、車に向かって踵を返した。



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by kkkaaat | 2014-10-03 00:14 | 火、狩人【シンイ二次】 | Comments(11)
Commented by トナン at 2014-10-03 00:30 x
こんばんは(^ ^)
さっそく続きをUPして下さったんですね!
ありがとうございます。
ウンスの小さなお城の中はむさ苦しい男達でいっぱいですね(笑)

ウンスが怒るのも無理はないですね(^ ^)
読みながら顔がニマニマしちゃって、息子から顔がにやけてるよって言われちゃいました。
次回がとっても楽しみです。
Commented by ミジャ at 2014-10-03 02:00 x
(ノ゚ο゚)ノ オオォォォ-
リクエストのコメントしてて・・・こっちのお話が更新されてたの見逃すとこでした!
久しぶりの「火、狩人」なんだか楽しいです。
もう1度、1~読み直してきます。
更新、お疲れ様です^^
Commented by sunn at 2014-10-03 06:38 x
リクエストが叶って嬉しいです(●´∀`●)
いや~、面白いですね、そりゃ、チョナからしたらウンスの家なんて小さいけど。皆やりたい放題でウンスが怒るのも分かります。これから更に色んな物を目にするはずなので反応が楽しみです。
Commented by ピヨコ at 2014-10-03 07:40 x
おはようございます♪
早速の続きアップ嬉しいです。しかも、パラレルな
お話の「火、狩人」( ´艸`)
ウンスの城が、占領されていく~
靴脱いでよ!先に入るな!って、言いたくなるのわかる(笑)
ひげ男もいい仕事されてますな。これからどんなトラブルが
起こるのか楽しみです。回りは高麗に無いものばかりもの( ´艸`)
Commented by たまうさ at 2014-10-03 09:49 x
ミチさん、おはようございます。
「火、狩人」の続編アップ、ありがとうございます!!
高麗の面々、面白いです~。それぞれの様子が目に浮かぶ浮かぶ!
さすが!やっぱりミチさんワールド最高です!
考えたら、チャン先生がウンス側という設定も面白いですね。
確かに、ウンス一人ではこの状況を冷静に解決できませんよね。笑
続きが楽しみですが、北斗七星もあると思いますので
どうぞ御無理はされませんように・・
リクエストして良かったぁ~♪
Commented by 0523you at 2014-10-03 13:07
wa~i わーい!ありがとうございます。
リクエスト、願いかなって更新してる♪
起承転結、まだ起のところだけど、とっても楽しみです。



Commented by ミサ at 2014-10-03 22:06 x
早速の行進、ありがとうございます。
ウンス、怒れ~~!!
皆、失礼すぎるぞ
王妃様、大丈夫・・・
Commented by ままちゃん at 2014-10-03 22:20 x
このシリーズ大好きなんです。ありがとうございます。
この傍若無人な男達。ウンスの堪忍袋はいつまでもつのかしら。
楽しかったです。これから展開されるであろう、トラブル等など・・・。また、次が見たくなってしまいました。
楽しみにしています。
Commented by 皐月 at 2014-10-03 22:23 x
早速、リクエストに応えていただけて、とても嬉しいです。
ありがとうございます!(^^)!

妙に態度の大きいむさくるしい男達に、勝手にずかずかと上がり込まれたら
ウンスが怒り心頭になるのは当たり前!
当たり前って思えるような情景が浮かんで来る文章、流石って思います。

ウンス、そのうちキレちゃうかも?
部屋に入ったヨン達は、TVやら冷蔵庫やらにどんな反応をするんでしょうか?
ウンスはパク・ハと違って料理は苦手だろうから(笑)
「食事は?」って言われて、レンジでチンだったりして?
現代の文明に触れた高麗御一行様の驚愕を想像すると\(゜ロ\)(/ロ゜)/
今から可笑しいやら気の毒やらです。

ヨンとウンスがあま~~い雰囲気になるまでの道程はまだまだ遠そうですね?
その展開を待つのも、とても楽しみです。

Commented by shinobuchin at 2014-10-04 03:58 x
早速リクエストに応えて下さり、本当にありがとうございますm(__)m嬉しいですっ‼︎

久々の「火・狩人」を読めて楽しかった〜(#^.^#)
また、たま〜にで構わないので、チョビチョビと更新していただきたいなー…なんて欲がつい出てしまいました(^◇^;)

Commented by るー at 2014-10-05 22:09 x
とってもとっても続きが読みたかったお話なので、嬉しいです!
自分のお城をむさ苦しいと言われたウンスがおもしろ…いや気の毒でたまりません(笑)
これからどうなるか、ワクワクです!
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