筆記



【シンイ二次】スリップ3








へえ、こうなっていたのか!
僕はケギョンの街並、外から見た城壁、城内の様子に目を奪われる。
撮影は大がかりだったけれど、組まれたセットはもちろん限られていて、
セットを出ればそこは現代社会だったわけで。
変なことを口走らなように気をつけてはいたが、
目がきょろきょろとあたりをさまよってしまうのは止められなかった。

「テジャン、どこに行かれるんですか?」

テマンに言われて、行き過ぎていたことに気づく。

「いや、少しぼんやりしていただけだ」

くるりと戻って、ウダルチの一群に混じる。
なんだか、今日は変ですよ、とテマンがまた疑惑の目で僕を見る。
皇宮の建物には入らずに脇を歩いて抜けていくと、
見覚えのある鍛錬場と、ああ! あの懐かしい二階建ての建物。

自分の足取りが力強くなるのがわかる。
ここなら、自分のフィールドだ。
いくつものシーンをここで撮影した。
実を言えば、隊長室のセットはこの建物の中にはなかったんだけど。
でもきっと、この世界ではあの部屋はこの中にあるはずだと信じて、
トクマンやトルベを追い抜かして、先頭になって入る。

くつろいでいたウダルチ兵たちが、ガタンと椅子の音を立てて立ち上がる。
中には僕のかっこうに驚いて、腰のものに手をかけたものもいた。
うん、あなたの行動は正しいです、高麗武士たるもの、城内とて
常に警戒心を忘れてはならぬ、なんてね。

「心配するな、この装束については後で話す」

足を開き気味に踏みしめて、手は横に力を抜いてたらし、軽く握る。
ウダルチの衣装を身につけていたときの仕草を思い出しながら。
じろり、と睨みつけると、ウダルチ達は、はっ、といっせいに答え、
一礼の姿勢を取る。

その一群の先頭に、ペクさんの姿を見つけて、懐かしさでいっぱいになる。
なんだよ、みんないるじゃないか!
歩み寄ってくるペクさん……じゃなくて、副隊長チュンソクが、
遠慮がちに見ないよーにしながら、僕のスーツを見ている。
いや、視線隠せてないから。

「テジャン、留守中、特に変わったことはありませんでした」

でも、後で話す、とチェ・ヨンが言ったから、何も尋ねようとはしない。
そうそう、これでこそプジャンチュンソク。

「医仙はチョニシに行かれました後、戻られて、
昼食をみなといっしょにおとりになられ、
それから隊長室で休息をとられております」

昼食と聞いて、自分の腹がへっていることに気づく。
そうだ、腹ペコだ。コンサートのはじまりからもちろん何も食べてない。
今になって気づいたけど、埃っぽい街路をずーっと歩いてきて、
喉もからからだ。

「昼食かあ…」

腹が減るなんて、これが夢である確率はもう1パーセントもない、
と往生際悪く、そんなことを考えながらつぶやくと、

「いえっ、手前はご一緒しておりません。
まあ、あの食事のおしまいのほうは同席させていただきましたが、
わずかな時間です。
皆もその、楽しそうに歓談などできるだけ控えまして、もうあの黙々とですね、
栄養補給としての食事をとっただけでありまして。
医仙がお話になったときのみ、こちらからもご返答申し上げる程度の
とどめてはおりましたが、なにしろ医仙がよくお話になるものですから――」

とうろたえて聞きもしないことを口走る。
そうか、そういやチェ・ヨンは、ウンスに部屋にこもるよう命じていたし、
ウダルチの若い奴らとウンスが仲良くするのに、ちょっとばかし、
やきもちを焼いたりしていたんだっけ、と思い出す。

ウンスが兵舎で暮らしているということは…とドラマ何話目あたりか
見当をつける。

そうかあ、あの告白、もうここのウンスは聞いているんだな…。
うわっ、なんか。
なんか、照れる。
いや自分が言ったわけじゃないんだけど。
ん? いや僕が言ったのか。
いやいやいや僕が言ったわけじゃなくて、チェ・ヨンが言ったわけだけど。

こんがらがった頭の中を、パラドックスがぐるぐる回る。
黙っていると、チュンソクが恐る恐る声をかけてきた。

「テジャン、あの、私の差配に何かまずいところがありましたでしょうか…?」

おっと、ごめんごめん。
チュンソク、きみのせいじゃないから。

「いや、少し考えごとをしただけだ。
部屋に行く。しばらく誰もよこすな」

言いおいて歩き出すと、はっ、と力強い返答。
こうやって釘を刺しとかないと、チュンソクはいいところで邪魔するからな。
ドラマ内空気読めない度ナンバーワンと、よくペクさんをからかった。
いやうそ、有能ですよ、このプジャン。

「下がれ。一階を守備せよ」

階段を上がって、部屋の前の守備をしている兵も一喝する。
こいつら、立ち聞きするからね。
意外と遠慮がない、ってか下系の話大好きだからねティムウダルチ。

皆が下がったのを確認して、そーーっと扉を開け、
顔だけを差し入れて部屋の中を覗く。

「テジャン!」

いたーーーーー!!!!!
うろたえて、思わず扉を閉めてしまった。
おいおい、閉めてどうするよ。

「テジャン?」

小さく甘えるような声が不思議そうに中でした。
思い切って、ばっと扉を開けて中に入る。
あの“ウンス”がいた。
う、おおぉ、なんというか美人だ……。
あれ、なんか、うわっ、あれ? 覚えてるより、かっわいいなあ。
ヒソンさんともなんか、そっくりなんだけど、ちょっと違う気がする。

「え、ええー?」

おっと、ぼんやりしてる場合じゃなかった。
どうしよう、チェ・ヨンで行くべきか、僕で行くべきか。

「あなた……? だれ? どうして…どうして現代の服を着ているの?」

はい、チェ・ヨンのせん消えたー!
そうだよね、ウンスは僕のこのかっこう、高麗じゃ手に入らないとひと目でわかる。

「あの、決してあやしいものではないんです」

いやあやしいよね、不審者以外の何者でもないよね。

「ちょっとお、なんであの人にそっくりなのっ!?」

どんどんウンスさんの声が大きくなる。

「お願いします、お願い、大声を出さないで。
いま、いますぐ説明しますから」

口の前に指を立てて、必死に手をふって頼みこむ。
ウンスさんは腰に差していた大きな剣を抜いて、構えているが、
慣れていないのでふらついている。

「ああ、危ない、ウンスさん、剣下ろして、うわっ」

よろめいて、切っ先がこっちを向いて、僕は慌てて距離を取る。
ドラマの最初みたいに腹を刺されたら、今度も助かる保証はない。
第一、チャン侍医いるのか? 
いまここフィリップ降板しちゃった後だよねー?

「お願いします。困ってるんです」

――現代のソウルから来て。

言ったとたんに、剣の切っ先がドンと床に落ちる。

「げん、だい? なんで私の名前を知ってるの?」

こくこくと、と小刻みにうなずいてみせる。



(ええまだ続いてるんです…)


by kkkaaat | 2016-03-07 23:09 | パラレル【シンイ二次】 | Comments(12)
Commented by mm5210 at 2016-03-08 00:03
三話目!
アップありがとうございます。
楽しませていただいてますヨン。
もう笑い転げてます!
(“はい、チェ・ヨンのせん消えた−!” でコーヒー噴きました…懐かしー)
…そうそう、ウンスにしてみれば、テジャンじゃないのになんで? ですよね。
続きが楽しみでなりません ♡
…もしかして、現代には高麗のムサ、チェ・ヨンが行ってたりしちゃって?!?!?!

そっか明日はもう春なんですね。
(わたしも関東です)
ミチさんがお話しを書き進められるよう、花粉…飛ばないでいいですから〜
Commented by たまうさ at 2016-03-08 01:06 x
ミチさま、こんばんは。
想像を遥かに遥かに超える面白さです〜♪
読みながらニヤニヤしっぱなしでした。
頑張って順応しているミノssiが目に浮かびます。
きっとウンス姉さんが力になってくれますよね。
タイムスリップの先輩ですもの〜。
もし、ここに本物?のテジャンが現れたらどうなるかな。
若ヨンではない天界ヨンにもヤキモチ焼きそうですよね。笑

はい!まだまだ続いてくださいませ〜!
面白うて面白うて、たまりましぇ〜ん。^^
Commented at 2016-03-08 01:54 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ぽんた at 2016-03-08 10:17 x
ミチさん…めちゃくちゃ面白いです!

ミノは、ウンスと出会いましたね。
同じ境遇(って言うのかな?)の二人が、どう動くのかワクワク&ドキドキです♪
血が出ないように…怪我しないように…
己の身を護るヨン…(笑)
続くのは大歓迎です♪
更新ありがとうございました!

Commented by saikai at 2016-03-08 22:40 x
ミチさん、お久しぶりです。
以前、コメントさせて頂きましたsaikaiです。
すいません、更新、気付かずにいました~。

実は、私、ミノペンでして、『うんうん、ミノ、こんな感じ~♪』って、爆笑しちゃいました~。

ミチさんの新しいお話を読んで、『あ~。やっぱり、ミチさんのお話、好きだな~。』って思いました。
なんか、変な人っぽいコメントで、すいません。

続き、楽しみにしています。
Commented by kkkaaat at 2016-03-09 00:32
>mm5210さん
三話目きました~!
楽しんでくださって、こちらこそありがとうだヨン!
懐かしのギャグ、うけていただいて、よかったです!
ミンホさんにこんなセリフ言わせるの、いいのかなーと思いつつ、
言わせてしまいました。

>…もしかして、現代には高麗のムサ、チェ・ヨンが行ってたりしちゃって?!?!?!
す、するどい…?

薬飲んで、マスクして、花粉メガネかけて完全防備で出かけてますが、それでも今日は頭痛が起こりました(泣)
ピークが今週らしいですから、それを思って耐えます!
Commented by kkkaaat at 2016-03-09 00:33
>たまうささん
たまうささん、こんばんは。
ニヤニヤしていただき、嬉しいです♪
ミノさん、根が素直そうというか、わりとなんでも順応しそうなイメージなんですよね。
ウンスに通じるものがありそうです。
ウンスも、最初はジタバタしましたが、受け入れてからの順応力はすごかった!
本物は、攻撃的な気がしますよ~、ウンスが親身になったら余計に(笑)
顔がそっくりでも平気で投獄しそうヽ(´Д`;)ノ

>はい!まだまだ続いてくださいませ〜!
嬉しいお言葉、ありがとうございます!
しかし、予告通り、4回で終わらせるよう無駄に長い4回目書いてます。
ここらへんでたたまないと、収拾つかなそう(笑)
Commented by kkkaaat at 2016-03-09 00:34
>鍵コメさん
な、なんと!!!!!
スゴーーーーーーい!!!!!
実際に行かれたんですね!?!?
ちょ、感動~~。
見ていてちょっとぶるぶるしちゃいました!

私の方は、ドラマを見て、カメラの角度的にも、隊長室はあきらかにセットっぽかったので、この建物とは違うとこで撮ったんだろうな、と勝手な判断で書いてました。
当たっててよかった(ひやひや)

ブログは何度かお邪魔させていただいてたのですが、昨年はネットを徘徊する余裕がなかったので、この記事は初めてみました!
ひゃー、ありがとうございます!!
Commented by ミジャ at 2016-03-09 01:36 x
ミチさん、こんばんは( ´ ▽ ` )ノ
ウンスさん、出てきましたね!
テジャンの部屋に隠れてる頃だったのね。
ミンホ君を見ても、ヨンに似てるけど誰?…って思ってる?
ウンスのいた天界には、俳優イミンホはいなかったのか?
仕事が忙しくてテレビなんか見てなかったから知らなんだだけ?(^ω^)

ミンホ君が、ウダルチ隊員やウンス見て、うわー本物だ!
兵舎見て、あーこうなってたのか…ってシンイファンの私(達)目線で見てるとこが面白いし嬉しい!
ウンスの、生「テージャン?」も聞けたしね(^ω^)
続き、楽しみに待ってます。(*^^*)
Commented by kkkaaat at 2016-03-09 22:42
>ぽんたさん
面白いと言ってくださって、ありがとうございます~!
ギャグを書くときは、気軽に書きながらも、アップしたあと、すべってないかなー、いや明らかにすべってるよね!? とドキドキしてるので、お言葉が非常にありがたい~!
同じ境遇ながら、キャラvs生身の人間ということで、邂逅は意外とさらっとかもですw

ミノさん(ミンホさん、ミノ読みの方が正確なのでしょうか? それともファンはこう呼ぶのかな?)
度胸はとーってもありそうですが、危ないことは別に恥ずかしがらずに回避しそうですよね、なんとなくですが、あまり変なこだわりとかなさそうなイメージです。

>続くのは大歓迎です♪
こんなアホな話にありがとうございます!!
しかしこれ以上続けると、なんかもう破綻しそうなので、次回で終わらせます(●´ω`●)ゞ
このあと、更新させていただきますね!
Commented by kkkaaat at 2016-03-09 22:43
>saikaiさん
お久しぶりですーー!!
コメントいただき、いやもうほんと嬉しいです。
一年間、放置状態だったので、たぶん訪れることをお止めになった方がほとんどだと思いますので、こうして以前書き込みのあった方々がいらしてくださると、ほっとするというか安心するというか。
たまたま覗いた方は、「えー、この店潰れてなかったんだ…?」的な感じだと思います。
すいませんなんてとんでもない。
むしろ、6月くらいに「閉鎖してないのに今気づきました」的なコメントが入るくらいの感じを予想して更新しました(笑)

最近になって時間ができたので、少しネットサーフィンを再開したのですが、シンイファンの方がけっこうな確率でミノペンであることを、いまさらながら知りました!
そうですよね、私も前ジャンルでは、作品と俳優ファンを同時並行でやってましたから、当然そうなるんだなあ、と納得してます。
ミノさん(こう書くと、みの〇んた的な感じが否めません、やめたほうがいいのかしら)は、花より~の方のファンが多いのかと思っていたので、コンサートで、シンイ関連のファンサービスが多かった記事を読んで、驚くやら嬉しいやらでした。

お話、好きと言ってくださって、本当にありがとうございます。
読んで欲しい・読んだ人に楽しんで欲しいと熱望しながら、結局のところ、自分の書きたいものを書きたいようにしか書けない、というけっこう矛盾したスタンスで運営してますので、気に入っていただけたら、とても満足感があります。
素敵なお言葉に感謝感謝です。

今年は、4、5、6月に、睡眠削る時期が来るのはわかってるんですが、それ以外は自分の趣味の時間を大切にしたいと思っているので、よかったらまた、時折、前を通りかかってやってくださいませ。
Commented by kkkaaat at 2016-03-09 22:47
>ミジャさん
ミジャさん、こんばんは(n‘∀‘)η
ウンス、テジャンの部屋に同棲していた頃とさせていただいました。
まだウンスに出会う前とかも考えたんですが、ここまで来たら、やっぱりミノさんもウンスに会いたかろうと♪
>ウンスのいた天界には、俳優イミンホはいなかったのか?
すーるーどーいー!!
えーっと、その点についていろいろ考えたんですが、一応いなかったことにしました。
「花から男子」に出たイ・ミンギとかこう~パラレルーな人物は、ウンスの世界にいたかもしれないな、と思うのですが、もし同じ顔なら、スリップした時点で、「なんでチェ・ヨン隊長はイ・ミンホにそっくりなの?」ってならなきゃいけないわけで、パラドックスのループに入りますので、いなかった、という設定です。
だっていくら仕事が忙しくても、ミノさんのことはたぶんほとんどの韓国人が知ってますよねきっと?
>ウンスの、生「テージャン?」
このお部屋に来たなら、やはりこれがないと(笑)
ミノさんにもぜひ、この世界を満喫してほしいもんです。
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