「9枚目」
つわりのせいもあってか、うまく眠れない。
こういうときは、無理に眠らなくてもいい。
横になっていれば、睡眠の70%の休息をとることができる。
あの人も、寝るのが趣味みたいな人だったって聞いたことがある。
私を拐ってからは、ぼんやり寝ているところなんて、見たことがなかったけど。
数日間眠り続けたこともあったというけど、ストレス性の睡眠発作だろうか?
もしくは、初期欝だったのかもしれない。
許嫁を亡くしてとても辛い目にあったらしいから。
あの人はいま、きちんと眠れている?
まず、助かったことが前提になるけれど。
助かったじゃない、助ける。
そう決めて現代から戻ったんじゃないの。
動けるうちに、やれることをしよう。
明日はあの人が倒れていた場所に、抗生物質を埋めることにする。
「ねえ、医者らしいことが、ここにも書かれてるわ」
母親が、興奮しすぎないように、声を抑えながら父親に話しかける。
「誘拐のあと、病院に一人で戻ったのにウンスはまたどこかに…」
そう言いながら、じっとノートを見つめる。
現代から戻ったって、何なのこのノートは、タイムなんとかみたいじゃないの、ねえバカバカしいけど…と言いながら、母親は言葉をと切らせた。
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