筆記



カテゴリ:星天の屋根【シンイ二次】( 4 )


【シンイ二次】星天の屋根 おまけ~起き抜けのヨンとウンス



「イムジャ、起きてください」

ささやかれて、チェ・ヨンの上で丸くなっていたウンスは薄く目を開ける。
身構えていた眩しい光はなく、まだ明けたばかりの少し間抜けな感じのする
白っぽい晴天が目に入った。

「まだ早いじゃないの」
「まだ明け方ですが、あと半時もせずに兵たちが起きはじめます」

それがなあに、とチェ・ヨンの顎の下に身をすり寄せながら言うと、
俺はかまわぬが、あなたはこうして共寝しているところを見られたくないでしょう、
と髪を指に絡めるように触りながら言われた。
ぱちり、とウンスの目が開く。

今なら誰も見ておらぬゆえ、と言いながら、なぜかチェ・ヨンはちらりと上の方に
目をやった。
ウンスが急いで身体を起こそうとするのを、ぐいともう一度引き寄せて、
そこまで急がずとも、と腕を回したが、ウンスがそれを押しのける。

「ちょっと、ちょっと、どいて。どいてちょうだい。こんなところ見られたら、
気まずくって一緒に旅ができないわ」

慌ててチェ・ヨンの身体の上から降りると、近くにあった筵の端に手をかける。

「そうだわ、昨晩はありがとう。おかげでとてもよく眠れたわ」

チェ・ヨンが引き寄せた筵を元の位置まで引きずっているウンスは、
上の空でそれだけ言った。
あまりありがたがっておられぬようだが、とチェ・ヨンが笑いながら言うと、
いいえ、本当に感謝しているのよ、と筵の上に腰掛けて寒さに身体をこすりながら
ウンスは言うが、きょろきょろと辺りを見回していて、やはり上の空だ。

チェ・ヨンが、は、と一つ息を吐いて肩をすくめていると、
ウンスがチェ・ヨンに向けて手を伸ばす。

「なにか」

そう問うと、ちょいちょいとチェ・ヨンの上にかかった綿入れを指さす。
放り投げると、ウンスは急いで広げて身体に巻きつけた。
ウンスはチェ・ヨンに背中を向けて横になったが、もう一度急いで身体を起こす。

「冷たくて嫌だけど、眠いからもうちょっとだけ寝るわね、おやすみ」

そう言うと、うんと身体を縮こめて、ぎゅっと綿入れの中に丸まった。
その様子が可笑しくて、チェ・ヨンがくくく、と笑うとウンスは、
笑い事じゃないわ、とぶつぶつと言っている。

「それでは俺は起きるとします」

チェ・ヨンはそう言って、身体を起こすと、筵を丸め、外してあった鎧を
手に取ると、横になっているウンスの傍らにどっかと腰を下ろす。

「ちょっと! なんでそこに座るの」

離れたのに意味がないじゃない、とウンスが言うと、見張りです、とチェ・ヨンはうそぶく。
ウンスはチェ・ヨンを睨みつけていたが、屈託のない笑顔でじっと見つめるに根負けして、
自分も笑ってしまった。

「もう、いいわ。わたしも起きるから」

そう言って、ウンスが起き上がると、手を貸しながらチェ・ヨンが言う。

「もう二日目になってしまいました」

名残おしい、あとたったの九日で開京に着いてしまう、というようなことを惜しむように言う。
ウンスがまだやっと一日すぎたばかりよ、と首をかしげると、チェ・ヨンは真面目な顔をして言った。

「旅でなら、こうして一日中あなたのお側におられます。
都に戻れば、そうもいかぬ」

大真面目にそんなことを言うが可笑しくて、ウンスは笑いかけて、それを止める。
チェ・ヨンは本当にそう思っているのだ。

「大丈夫、都でもずっと一緒よ。ずっと、ずっと側にいるわ」

チェ・ヨンの手を取ると、ウンスは安心させるように、その手をポンポンと叩いた。

ええ、そうですね、とチェ・ヨンはウンスから目を上げて、
まだ明けきらない西の空を見ながらそう言った。



(おまけおしまい)


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by kkkaaat | 2013-10-21 22:56 | 星天の屋根【シンイ二次】 | Comments(28)

【シンイ二次】星天の屋根3

「羨ましいよなあ…」

川べりにしゃがんで、顔を洗いながら于達赤隊の若い兵が、しみじみとつぶやく。
こいつ、昔のトクマンに似ているな、と思いながらテマンが尋ねる。

「何がだ?」

テマンは上衣も脱いで裸足になって川に入り、切るような水で身体も洗っている。
若い兵は、ぼうっとしていて、テマンの問いかけは聞こえていないようだった。
もう一人の若手もまた、膝まで川に入って、テマンの横に並んで身体を洗い出した。
ううふ、と震えながら横のテマンに話しかける。

「テマン兄、テマン兄はいつもテホグンニムと一緒で羨ましくありませんか」

だから何がだ、と苛ついたようにテマンが問う。

「あんな綺麗なお人とご一緒で、昨晩も、どっ、同衾なさっ」

興奮したように言うのを、テマンに尻を蹴られて遮られる。

「寒かったから、お庇いもうしあげただけだ。勘ぐるな」

起きてきたチュモが、昨晩の号泣など忘れたような顔で、ざぶざぶと川に入りながら
若手に釘をさす。徴用兵の二人も起きてきたようだ。

「お前らは知らないが、大護軍は前に一年ほども医仙様をお守りして、
ひと月かふた月ほどだったか、于達赤隊の隊長室にお泊めになったときも
手出し一つなさらなかった方だぞ」

チュモが手のひらですくった水を、何度も顔にかけながら声を荒げてそう言うと、
徴用兵がまあまあ、と間に入る。

「まあまあ、あれだけの美人を前にして接吻のひとつやふたつで、
男盛りのテホグンがようこらえたと思いますよ」

うんうん、とうなずいているテマンを見て、チュモが絶句する。

「おまっ、見たのか!」

うわずった声でチュモが言うと、俺は夜目がきくからな、とテマンは事も無げに言った。
こんなふうに野営するときは、俺はいつも大護軍に近い樹上で
見張りながら寝るんだよ、大護軍も許してくださってる、と自慢げに続ける。

そうなのか、と低い声でつぶやいて、チュモは何かを振り切るように頭にまで水を
かけて、ぶるる、と身体を震わせた。

「早く開京に帰り着きてえなあ、俺もかあちゃんに会いてえよ、
あんなべっぴんの女仙じゃあないけどなあ」

と最も年嵩の徴用兵が言うと、皆が笑いながらいっせいに、開京の方角を見た。
青天がその視線の先の先まで広がっている。

おおし、今日は平壌まで参りましょう、と誰かが言うと、馬鹿まだあと三日はかかる、
とチュモが答える。
まずは医仙が馬をもっと走らせられないとなあ、とテマンが身体を拭きながら言うと、
ああ、まずはそれが問題だ、と皆が口々に言いながら、それぞれ岸に上がって、
身支度をはじめた。


「羨ましいよなあ…」

一人だけ、川の向こう岸をうっとりと眺めている若い兵だけが、ぼそりとまたとつぶやくのだった。




(おしまい)




あと少し、おまけがあります。今晩にでも。
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by kkkaaat | 2013-10-21 00:29 | 星天の屋根【シンイ二次】 | Comments(20)

【シンイ二次】星天の屋根2

ウンスは、少々困惑していた。

あまり感情を表に出さない印象だったチュモが目の前で、
涙で頬が全部濡れるほど泣きながら、ウンスを恐ろしい形相で睨みつけている。
いや、睨みつけているのではなく、ただありえぬほど真剣に
話を聞いているのだとわかってはいたが、ウンスは目をそらしていた。

テマンもまた目を涙でいっぱいにして、キラキラと輝く瞳で
樹の上からこっちをじっと見つめている。
年嵩の二人の徴用兵は、さっきから鼻水を盛大にすすりあげているし、
ソクチェは途中からうつむいたまま顔を上げない。
ウダルチの若手二人のうち一人は、うう、うう、と絶えず小さな声を出しているし、
もう一人は木の陰に隠れて明らかに泣いていた。

チェ・ヨンはというと、話の途中からこちらに背を向けて寝転んでしまい、
一度もこちらを見ない。

むくつけき男十人が、目の前で悲嘆にくれているという光景は、
どうにも異様で、ウンスはこのまま話を続けていいものか、先程から迷っていた。
時折挟まれる合いの手というか、質問から推測するに、彼らはどうやら
フィクションとファンタジーの区別をしていないようだった。
本当にあった話として、ウンスの物語りに夢中になっている。

「それで、医仙さま、その女人はどうなるのですか!
まさかそいつを物陰から見るだけ見て、出立してしまうのではないでしょうな!」

口篭っていると、チュモが片膝を立てて今にもこちらに飛びかかってきそうな様子で
詰め寄るように先をうながす。

「え、ええ。じゃあ続けるわね」

ウンスがまた口を開くと、男たちがぐっと身を乗り出す。
怯えたような苦笑いを浮かべながら、ウンスは続けた。

「するとその隊長は降りてきて、娘をかき抱くの。
それから言うのよ」

ごくんと、唾をのむ音が聞こえそうだ。

「サランヘヨ…」

ウンスが情感たっぷりにそう言うと、男たちから、おお、と声が上がる。
しかしながら、なんとはなしに反応が悪い。
男たちはちらりちらりと周りの者の顔をうかがっている。

「で、そのサランヘヨというのはいかなる意味で」

徴用兵が尋ねると、他の者も、そうです、いかなる言葉ですか、と身を乗り出す。
ウンスはこくりと頷くと言う。

「言葉にできぬほど相手を想い、そばにいてもなお恋しい、
そういう気持ちを伝えるとき、天界ではサランヘヨ(愛しています)と言うのよ」

おおおお、とひときわ大きな歓声があがり、男たちは手を打ったり、
肩を叩き合ったりして喜んでいる。
チェ・ヨンまで起き上がってくるりとこちらを向くと、あぐらをかき、
一人何度かうなずいている。
やっぱり聞いているんじゃない、とウンスは肩をすくめた。

それからひとくさり話を語り終えると、兵たちは興奮冷めやらぬ様子で、
なかなか寝ようとはしなかった。
娘に懸想していて旅芸人とねんごろになったほうが娘は幸せになれたのじゃないか、
わしの娘ならそうさせたい、と力説する者やら、
女人が男装してそんなに化かせるものであろうか、俺なら決して騙されん、
と息巻く者やら、たいそう盛り上がっていた。

しかし夜も更けて、チェ・ヨンが休めと一声かけると、若い兵が不寝番に立ち、
残りはそれぞれに茂みやら樹上やらにこしらえていた筵を広げただけの寝床に
散っていった。





山ではまだ、根雪も消えぬ季節だ。
火を消すとあたりは急速に冷えてくる。

比較的大きな木の盛り上がった根の間に、うまく寝床を取ったチェ・ヨンの傍らで、
ウンスは心持ち平らかな場所と判断したところに筵を引き、
自分にだけ用意された綿入れをかぶって横になった。

新月の晩の山の中は、目を開けても閉じてもあまり変わらぬほど暗く、
上を見ると、まばらな葉を透かして、痛いような鋭い光で星がまたたいている。
丸まって、綿入れでつま先までをすっぽりくるんで、目だけを外に出して温まろうとするが、
冷えた地面に熱を吸い取られてうまくいかなかった。

はあ、と息を吐くと、薄白い息が暗闇の中に散り消える。
傾いた地面になんだか気分まで悪くなりそうだった。

「こちらへ」

チェ・ヨンの方から小さな声がして、何と思う間もなく、筵がずるりと引っ張られる。
慌てて身体を起こそうとして転がりそうになるのを、力強い腕が腰に回り抱きとめられた。

そのまま持ち上げられて、大きな身体の上に乗せられる。
手をつくと、覚えのある胸板だ。
チェ・ヨンの腹の上に腰掛けているようだと気づいて、ウンスはすぐに降りようとした。

「そのまま」

寒いのでしょう、俺の身体を寝床にお休みください、とささやかれる。
でも、重いわ、と身体をかがめて、顔のあたりでささやきかえすと、
軽くて何も感じませぬ、とチェ・ヨンはウンスの首の後ろに手をかけて、
そのまま自分の胸にウンスの顔を引き寄せた。

逆らわずに胸に頬を押し当てると、チェ・ヨンは自分の脚を使って、
ひょいとウンスの脚を自分腿のあたりに乗せてしまった。
冷たい地面と違って、チェ・ヨンの身体は温かく柔らかく、ウンスはほう、とため息が出る。
チェ・ヨンは手探りで綿入れを見つけると、自分とウンスの上にふわりとかけて、
ウンスを包みこむ。

それから、少しだけ頭を起こすと、ウンスに言った。

「あと少しだけ上に」

ウンスが上にずりあがるとまた、もう少し、と言う。
ウンスが、このくらい?と尋ねると、そうです、と満足そうに言って、
唇をゆっくりと寄せる。
ウンスの唇は冷たくなっていたが、チェ・ヨンの唇は温かく、
合わせるうちにすぐに温まる。

何度か重ねて、チェ・ヨンは弄うように食んだりもしたが、名残惜しげに離すと、
ふう、と息をつき、このくらいで、とウンスにか自分にかつぶやいた。

それから、ウンスの寝やすいよう、もう一度自分の胸にウンスの頭を乗せて、
腕で囲むように抱きこんだ。
チェ・ヨンの心臓の鼓動が耳に響いて、ウンスはたちまち瞼が重くなる。

自分に回された腕が緩むことなく、ゆっくりと力だけが抜けていくのに微笑みながら、
ウンスは眠りに落ちた。




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by kkkaaat | 2013-10-19 00:01 | 星天の屋根【シンイ二次】 | Comments(19)

【シンイ二次】星天の屋根1

天穴の地で再会のあと、都へと出立したチェ・ヨンとウンス、九名の兵の、
開京までの旅の情景の短めの話です。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「なにしてるの?」

ウンスは、二頭の馬の後ろ足を細綱で結び合わせている
テマンの横に腰をかがめて、手元を覗きこんだ。

「馬の脚を結んでいるんです」

テマンがそのままを答えると、ウンスは軽く肩を指でつつく。

「それは見ればわかるわよ、なぜ、結んでるか聞いたの」

テマンは、ああ、と合点がいった顔をしてもう一度答えた。

「こうして結んでおくと、う、馬が逃げないんです」

木につなげばいいんじゃないの? とウンスが不思議そうに言うと、
テマンはどう説明すればと頭をかき回しながら言葉を続けた。

「つないじまうと、ちょっとしか草を食えないでしょう。
は、腹がへっちまう。こうして二頭ずつ後ろ脚をつないでおけば、
少しずつ動きまわって、草は食えるけど、遠くまでは逃げられない。
わ、わかりますか?」

ウンスはなるほど、とうなずいた。

「雄同士だと喧嘩してしまいますから、こうして雄と雌をつないでやるんです」

医仙のは牝馬ですからチュモの馬とつないでおきましょう、とテマンが言うと、
急にチェ・ヨンがこちらを向いて、つかつかと歩み寄るやウンスの馬の手綱を
むんずと掴む。
それから無言のまま、自分の馬のところまで引いていくと、
しゃがんで素早く馬同士の脚をつないでしまった。

それから立ち上がって、ウンスの方を向き直ると、
ウンスは今度はソクチェのところに言って何やら話しかけている。
と思うと、え! と驚いた声がした。
いっせいに皆が振り向く。

「ここ? ここに泊まるの? ほんとに? ここに? 
歩いてここから移動するんじゃなくて?」

ウンスが驚くのは無理もない。
小さな山の中腹で、平らかな場所などひとつもない。
あまり樹勢のよくない木がのそりと集まって生えている中を、
獣道めいた申し訳程度の道が通っているだけの場所だ。
ソクチェは、眉を八の字に曲げて、心底すまなそうにウンスに詫びている。

この中郎将のオ・ソクチェという男、武官というよりは文官のように見える
やや頼りなげな外見で、その見た目の通り、武術は得手としなかった。
ただ目端がきいて策に詳しく戦いの風向きが読める。
もともとは鷹揚軍にいたのを、進軍にあたってアン・ジェが
チェ・ヨンの下につけたのだ。
医仙をこのような場所で眠らせることに困りきっているソクチェの側に、
チェ・ヨンが歩み寄って助け舟を出す。

「しかたがありません、明日には屋根の下で眠れるようにいたします」

明日も宿場のある町にはたどり着くことは難しいが、
人家のある場所を通るので、そこで一夜の寝床を乞うことはできるだろう。
道を急ぎたいのはやまやまだが、できる限りは壁と屋根のある場所に
ウンスの寝床を取るつもりで、道を決めた。
ただ、どうしても二日か三日は、野天で過ごすしかできない。

「こらえてください」

チェ・ヨンが言うと、別に嫌って言ってるわけじゃないわよ、大丈夫大丈夫
と言いながらもう興味は次に移っている。
危なっかしく斜面を歩きながらウンスは、
ねえ、テントじゃなくてええと天幕とか寝袋みたいなものはあるの? 
と水を汲みに行こうとしているテマンとチュモをつかまえて尋ねている。

水と聞いて、川に行くの? なら私も行きたい、
というのを邪魔になるからとチェ・ヨンが引き止めると、
邪魔なんかしないとむくれたが、皆野営の準備で忙しく、
ちらちらと様子をうかがうものの、ほおっておかれていた。





ご飯これだけなの、という言葉を、ウンスはやっとのことで飲みこんだ。
今日は出発したばかりなので、兵営で持たせてくれた饅頭や
塩辛く味付けした肉に菓子もある。
それでもこの倍はほしい、とウンスは思わずにいられなかった。

「あの、よろしかったらこれを…」

ソクチェが何を察したのか、自分の分からウンスに菓子を差し出したが、
さすがにそれは受け取れず、大丈夫よ、お腹いっぱいだから、
と空元気で答えた。

「宿が取れるときは、食事も腹いっぱい出してもらうようにしますから、
こらえてください」

こらえてください、こらえてください、ってさっきから私が不満だらけみたいだわ、
とウンスはチェ・ヨンを軽く睨みつけた。
口に出さないようにしているのに、周囲には筒抜けで情けない。
自分ばかりが不満を持っているようで、なんとなく居心地が悪くて、
もじもじと座り直した。

斜めに傾いた場所で足をつっかえ棒にして身体を支えるのは、
どうにも落ち着かず、休まらない。
同道の兵たちが、それぞれ思い思いの木や岩や地面の瘤をこれと定めて、
寄りかかったり、そこに尻をはめ込んだりして、
のんびりと過ごしているのを恨めしそうに眺めた。

これじゃあ私、役立たずの足でまといみたいだわ、と考えて、
その通りじゃないの、とウンスは我に返って大きなため息をつく。

「医仙、お疲れですか」

木の股に猿か猫のように身体を収めて居心地よさそうにしていたテマンが、
目ざとく見つけて、飛び降りてきた。

「ううん、そうなじゃいの。ただ、私、足でまといだな、って思って。
苦労かけるわね」

そう言うと、九人の兵がいっせいに首をふって、そんなことはない、
お気にめさるな、それが我らがつとめ、足でまといなどでは断じてありません、
と口々に言い募って、その真剣な様子にウンスは思わず微笑んだ。

「医仙さま」

わかったわ、わかったから、とウンスが皆を押しとどめていると、
いつもは寡黙なチュモが急に話し出す。

「あのう、それなら一つお願いしてもよろしいでしょうか」

なあに? とウンスが問い返す。
何を言い出すのかと、チェ・ヨンも寄りかかっていた木から
身体を起こしてうかがった。

「医仙さまがウダルチにいらしたときに、語ってくださったお話なのですが」

お話? ウンスは首をかしげる。

「春香という娘が出てくる…」

ああ! とウンスが声をあげ、パチンと手を叩いた。
迂達赤隊(ウダルチ)の兵舎にいたころ、現代で見たテレビドラマの話を
してあげると、皆たいそう喜んだものだった。

「あのように面白い話は聞いたことがございませんでした。
もしよろしければ、また何か面白いのを一つお聞かせ願えませんでしょうか」

それはいい、ぜひ聞かせていただきたい、と九人は口々に言う。
チェ・ヨンを見ると、かまわぬ、というように口の端を上げていた。
いや、意外にもこの人も聞きたいのかもしれない、とウンスは笑む。


「わかったわ、じゃあどの話にしようかしら…」





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by kkkaaat | 2013-10-17 20:35 | 星天の屋根【シンイ二次】 | Comments(15)

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