筆記



<   2014年 09月 ( 4 )   > この月の画像一覧


一周年企画&お礼(10月5日追記あり)

本日10月4日をもって、リクエストを締め切らせていただきます。
いつもは自分の頭の中身を皆様にさらしているわけですが、
今回はみなさまの頭の中を、ちょっと覗けた気分で、すごく面白かったです。
みなさまのリクエスト全部を、一つの話としては書き上げられなくても、
頭の中に留めおいて、これからのお話の中に入れ込んでいければな、と思ってます。

また、一周年記念のリクエスト、という形では締め切りますが、
こんなの読みたいんだよね~、というのがあったら普通にコメント欄にいつでも
お残しください。
こたえられるかは別として、影響はあると思います(笑)

それでは、まずはお礼まで!

(ここまで10月5日に追記)

たくさんのリクエスト、ありがとうございます!
いやー、面白いです。私が読みたいのばっかり(笑)
2,3編と思ってましたが、それじゃすまなさそうな感じですね。
思ったよりもたくさんの方にコメントいただくことができていますので、
今週中くらいで締め切らせていただこうと思います。

「火、狩人」の続き、とにかく二人がラブラブなもの、
ウンスが過去に行っていたいたときの話、ドラマの補完話あたりは、
リクエストが多いでしょうか?
締切後、集計してみようと思います。

思ったより少ないですね、むちゃぶり。

ひとつだけ二次魂を揺すぶられるすごいのがありましたが(笑)

少し残念なような、すごくほっとしたような。
引き続き、リクエスト、お待ちしてます!

(ここまで追記。ここからが最初にアップした文です)


こんにちは、ミチです。

シンイの二次小説を書き始めて、もうまる一年がすぎました。
ドラマを見て、「書きたい」という気持ちと、ストーリーが生まれたこと。
それを書く時間を持てたこと。
簡単にそれを発表できる場所があったこと。
そして皆さんに読んでいただけたこと。

本当に楽しい気持ちで一年過ごしてこられました。
後半は忙しくなってしまって、更新もコメントへのお返事も滞ってしまいましたが、暖かく見守ってくださる皆様のおかげで、やめることなく、細々とですが続けることができました。

あらためて、まずはこの筆記を読んでくださる皆様に、厚くお礼もうしあげます。

本当にありがとうございます。
読み捨てていかれがちなネットの話を追いかけ、時には感想までいただけたこと、どれだけ嬉しいことか。そういうときの私の胸を割って見せたら、エレクトリカルパレードなみにぴかぴかちかちかしていると思います!

そして、こういうときって普通

一周年感謝企画~!!!

とかやるものですよね? しかしながら、七月くらいにちらっとああ、そうか九月で一年だなあ、と思った記憶はあるのですが、その後一周年のことは頭に上らず…。
昨日9月終わるなあ~、とぼんやり考えていて、「はっ!」となった次第。
はいそうです…何も用意していません! 面目ない!

それでですね。
ここはですね、自力じゃなくて皆様のお力を借りようと。
(え~~~?)

この記事のコメント欄に、「こういう話が読みたい」「こういうシチュエーションが読みたい」「筆記のこの話のここらへん、書かれていないところが読みたい」「ドラマのあのあたりを話にしてほしい」など、いわゆるリクエストをいただけないでしょうか?
その中で、希望が多いもの、書けそうなやつをピックアップして、いくつか短編を書いてみようかと思います。
ロマンス、ラブコメ、ホラー、歴史モノ、ゴシック、ギャグ、サスペンス、人間ドラマ、ダブルパロディ、冒険小説。リクエストジャンルは自由です。なんでもあり。

無茶ぶり歓迎。


あっいやでもあんまりむずかしいのは…(笑)

お名前も明かさなくてもぜんぜんOKです。
「AAA」とか「チュンソク」とかもう適当なお名前で挨拶抜きでリクエストのみお書きください。普段コメントなさらない方でも、よかったら好き勝手にリクエストしてみてください。どんな話が人気があるのか、そういうのもちょっと興味があるのです。
お一人さま何度でもかまいません。
全部には応えられませんが、そこはご容赦を<(_ _)> 

ある程度数が上がりましたら、そこで締め切らせていただきます。
目処は一週間~十日くらいでしょうか。
集まらなければ、もう少し伸ばします。

ほんと、自ブログの感謝企画を読み手に頼るってところがすでにアウトっぽいですが、まあそこは大目に見てくださいませ。

それでは、この企画も、また筆記も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

ミチ拝



にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ

にほんブログ村
by kkkaaat | 2014-09-30 18:19 | お知らせ | Comments(89)

【シンイ二次】北斗七星6



「ねえ、都の噂は耳にしなかった? 体調がどうとか、顔色がどうとか。
ああっ、でも、あれだわね! 悪い噂だって意図的に流した可能性が
あるわけだから、うのみにはできないわ。ってことは逆に大変順調だそうだ、
なんて話も信用できないわよね」

顔を見るなり、ウンスはべらべらと一人勝手に喋りだし、
答えを待たずに一人勝手に考えを進めている。
トギは呆れ顔で、仕入れ担いで帰ってきた原料生薬の重い包みを、
ウンスに向かって放り投げる。

「おうっ! ちょっ! あぶなっ」

ウンスは丸い腹のうえで、荷物を受け止めてから、
トギにくってかかる。

「ちょっと危ないじゃないの! お腹の子どもに何かあったらどうするの?」

荷物を何とか抱えなおすと、ウンスは作業小屋にそれを運びながら大声を上げる。
トギは、ちっと舌打ちをして鼻で笑うと、水を飲もうと井戸へと向かった。

どさりと小屋の作業台に荷を置くと、ウンスはうーんとうめいて腰をさすり、
小屋の扉から外を確かめると戸を閉め、ごそごそと着物をたぐりあげる。
とたんにトギがバタンと音をたてて入ってくるなり、
ウンスの手をパチンと音を立てて叩いた。

「だって重いのよ、疲れるの。ね、あなたが戻ってきて気を配る人も増えたんだし」

ウンスが揉み手をして言うと、トギはせわしなく手で詰問する。

「外してない、寝るときもよ。ほんと。あなたがいなかった四日間、一度も」

トギは目を細くしてウンスの頭のてっぺんからつま先までじろじろと観察し、
それからおもむろに、すでにたぐりあげられかけていた着物をさらに
たくしあげる。

「ほらね、行く前にあなたが結んだとおりでしょ?」

ウンスの腰に結び付けられた、布団の塊のようなそれの紐の結び目を、
トギは仔細に観察し、ふん、と息を吐くと丁寧に着物を戻す。
うなずいてみせたトギに、ウンスは手を目の前で合わせる。
トギはしぶしぶうなずいて、夜になって部屋の戸締りをしてから、
とウンスに伝える。
ウンスは、一瞬ぱっと顔を明るくして、それから思い出したように、
また質問をしはじめた。

「ね、それで、開京の話はないの? 王妃様のものじゃなくても、
何でもいいの。新しい倭寇の話なんかはあんまり聞きたくないけど。
王妃様とお腹の太子様は大変お健やかになさっている、とか
太子の生誕するのを祝って明国から贈り物が届けられた、とか」

トギは包みを開きながら、大きく首を振った。
茶屋で用もないのに時間をつぶして噂話にも聞き耳を立てたし、
薬屋の主人にも最近変わった話は聞かないか、とわざわざ尋ねたが、
何も変わりはないようだと知って、ウンスは拍子抜けしたような
表情を浮かべた。

「まあ、何もないのがいちばんなのよね…」

自分に言い聞かせるようにつぶやく。

「ああっ! わたしが町に出られたら、もっといろいろ聞き出せるのに!」

とウンスが地団駄を踏むようにして言うと、
トギは眉をしかめて、町に出るなどもってのほかだ、と手を動かす。
声が出せていたら、よほどの大声に違いない。

「わかってる、わかってるわよ。
そうですよ、わたしは身重で具合が悪くて静養中ですってば!」

つわりがひどくて埃っぽい開京の屋敷にもいられなくて、
年かさの妊婦だから無理もできなくって、
友人の薬師(くすし)のところに身を寄せてるんだから、
町になんか出られませんっ、とウンスが口の中でぶつぶついうと、
トギは、長い長いため息をつく。
それに気づいたウンスが、口を尖らせて言う。

「だってもう半年もここから、この家の敷地から出てないわ。
散歩だって何があるかわからない、どこから何が漏れるかわからないから
しちゃだめだって、ヨンからきつく言われて、ずーっと守ってる。
ここは静かで素敵なところよ、それは認めるわよ。
でも、いくらなんでもここはひとけがなさすぎるわ!」

なにせお隣の家まで、歩いて半刻はかかる。

「話し相手はあなただけ。それに、それに、
女一人でこんなところに住むなんて、ええと、物騒だわ!」

トギは御前から下がると、開京の南にそびえる松獄山の麓に、
典医寺で働いていたときの禄を貯めたもので人足を雇い、
小さく土地を開いて屋敷を設けたのだ。
屋敷の周囲を自らこつこつと開墾して薬草畑を作って、
その売り買いで長く暮らしを立てていた。

「私は困ったことなどない? あっそう! あっ、そう…」

ウンスはまるで子どもの喧嘩のように、この辺鄙な場所の屋敷に
言いがかりをつけようとするが、トギにとってはすべて塩梅のいい
ようにしつらえられたこの住処をけなす言葉はなかなか見つからない。

トギは、ウンスのいらついた顔をじっと見て、表情を緩めると、
諭すようにゆっくりと手を動かした。

「ええ、ええ、わかってるわよ。だからこそわたしは怪しまれずに
ずっと隠遁していられてるの。本当は孕んでいないのを隠しとおせてる。
わかってます…」

ウンスは苛立ちを抑えらずに、立ったままつま先をパタパタと動かしている。
トギはほどいた包みの片隅から、竹皮で包んだものをぐいと差し出した。
最初はぎろりと睨んだウンスも、すぐにぱっと顔を向き直らせて、
ひったくるように受け取る。

「これだから、トギのこと大好きよ!」

包みの中は甘い餅菓子で、トギはウンスのころりと変わった態度に、
肩をすくめる。
全部たいらげて本当に腹ぼてのように肥えるといいわ、とさっそく開けて
頬張りはじめたウンスに向かって手言葉を投げつける。

「もう、嫌味なんて言わないで! これだけが楽しみなの!」

口に餅をつめたまま、聞き取りづらい声でそう言うウンスを無視して、
トギは荷の片付けをはじめる。
待って待って、とウンスは菓子を大事そうに棚に置くと、
急いで飲み下して、トギの横で手伝いをはじめる。

「お世話になっているんだから、これぐらいはしなくちゃね。
ほんとに感謝してるの、トギには」

ウンスが顔を覗きこみながらそう言うと、トギの顔がわずかに柔らかくなる。
産み月まであと数日。
十月めに入れば、産まれるまでは、あっという間だ。

「もうすぐ、ね…」

ウンスは自分でも気づかぬうちに、そうつぶやいていた。
トギはちらりと横を向いてウンスの横顔を見て、
本人は内心がこぼれていることに気づいていないと見て取ると、
気づかれぬよう小さくため息をついて荷解きを続けた。



にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村
by kkkaaat | 2014-09-29 19:57 | 北斗七星【シンイ二次】 | Comments(9)

【シンイ二次】北斗七星5


「よいのか」

王の肩が緩やかに下りる。
はい、と短く答えたチェ・ヨンの声は、いつもと変わりない。

「引き受けてくれるのか」

思わず王が聞き返すと、チェ・ヨンは少しだけ目をそらし、
玉座の足元にどさりと腰を下ろした。
チェ・ヨンでなくては許されぬ行為だ。

「実を言えば、チョナ」

腰を下ろしてから、顔を上げて王を見上げながら、チェ・ヨンは
言い辛そうに口にする。

「もとより、お引き受けするつもりでした」

王の目が、二度三度と瞬きをする。
チェ・ヨンは手のひらで膝を落ち着かなげに、擦った後、
こぶしを軽く握りしめる。

「ウンスが」

チェ・ヨンがそう言ったのと、王が合点がいったように、ああ、
と声を出したのには、ほとんど差がなかった。
そう、ウンスです、とチェ・ヨンが苦笑すると、王もまた小さな笑みをこぼす。
チェ・ヨンはあらためて言い直す。

「ウンスは、嬉しい、と言いました。目を潤ませて、嬉しい、と」

わかりますかこうやって、とチェ・ヨンが口元の前で両手を合わせる
ウンスのよくやる仕草を大雑把に真似ると、王は微笑みながらうなずく。
はあ、とチェ・ヨンは明るく息を吐いた。

「俺はウンスに子を授けることがかないませんでした。
まだ望みが途絶えたわけではない、ウンスは申しておりましたが。
本人は、あまり口にはしませぬが、自分のせいだと思うておるようです。
毒で二度も瀕死の目にあっておりますゆえ」

身体にも障りが残っておるようだと、とチェ・ヨンが淡々と述べると、
そうか、と王は、静かに答えた。

「ですから、この話を聞いたときに、大それたことという恐ろしさは
もちろんこと、ウンスがもしや妬みの心で苦しむのではないか、
とそれが気がかりでした」

いらぬ心配だったわけですが、とチェ・ヨンが大きく一つ肩を揺らして、
笑ってみせると、王も口の端を上げてにやりと笑った。

「それが、嬉しいと。子を育てることができる、
崔家に子どもをもたらすことができる、と」

笑ってそう言って、とそこで言葉をと切らせて、
チェ・ヨンは王からわずかに顔を背けて口ごもった。
しばしの沈黙の後、チェ・ヨンがことさら明るい声で言う。

「あの方には、かないませぬ」

あの方か、王は懐かしい呼び方を耳にして口の中で繰り返した。
それから、と続けて、チェ・ヨンは真顔に戻る。
これは長い年月で初めてウンスの口から出た話なのですが、と前おいて言う。

「王妃様が攫われたときに、自分が開京を出ていなければと、
心に思い置いていたようです。その咎(とが)のつぐないにはならないだろうが、
せめてお役にたてるなら、という思いがあるようで」

そう言うとチェ・ヨンは、すっくと立ち上がり、
すっかりくつろいだ様子で座っている王の前に膝をつき、頭を下げる。
突然のことに、王は居住まいを正す暇もなかった。

「その思いは俺も同じ。于達赤隊長としてのつとめを果たせなかった」

そう言ったチェ・ヨンの声は、思いのほか激しく、
王はわずかに戸惑いを見せながら、座り直した。

「こたびのお役目、命にかけて務めさせていただきます。
大事な御子をお預かりするというのではない、ウンスと二人、
我が子として」

口が一度、固く結ばれる。
チェ・ヨンは真っ直ぐに王の目を見つめた。

「我が子として」

チェ・ヨンはいま一度、気圧す声で繰り返した。

「育て、お守りいたします」

王は、ごくゆっくりとうなずき、
口が声には出さずに、頼む、と形作った。
しばらくの間、王とチェ・ヨンは互いに見入り、動きを止めていた。

それから、これでやっと申し上げることができる、
とチェ・ヨンはまっすぐに王を見つめたまま、立ち上がった。

「チョナ――おめでとうございます」

目の前で、そう言うチェ・ヨンの目に浮かぶ、率直な喜びを受けて
王の口元に浮かんだ笑みは、心なしか寂しみをにじませているようにも思えた。



にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村
by kkkaaat | 2014-09-25 19:17 | 北斗七星【シンイ二次】 | Comments(29)

【シンイ二次】北斗七星4


かなり長い時間、ウンスは黙りこんでいた。
少しうつむいて、頭の中に浮かんくるさまざまな言葉をどう連ねようか、
考えてこんでいる様子を、チェ・ヨンは辛抱強く見守っていた。
一度、わずかに口が動きかけて、また止まる。

チェ・ヨンはゆっくりとウンスにもたれかかり、
自分の頭をウンスの肩に乗せた。

「……怒らない?」

そうウンスが言った瞬間に、チェ・ヨンの眉間に皺が寄った。
ふーっ、と長い息がチェ・ヨンの口から漏れる。

「いいから」

怒るとも怒らないとも約束せず、チェ・ヨンはうながす。
ウンスは自分の肩に乗ったチェ・ヨンの頭に指をさしこみ、
髪をいじりながら、その頭に顔を寄せて、もう一度言う。

「ねえ……絶対に、怒らない?」

すると、チェ・ヨンはすいと身体を起こし、腕を組んで空を睨み、
もう一息吐いてから、怒らぬ、と低くもごもごと言った。
口を開かないウンスにチェ・ヨンが目をやると、かすかに顔をしかめて
疑うようなまなざしで見ている。
チェ・ヨンは苦笑いを浮かべると、脚と脚の間に頭を垂らし、
それから顔をねじってウンスを見上げるように見た。

「声を荒らげたりはせぬと、約束する」

怒ったことなど滅多になかろう、とため息をつきながら付け加えると、
ウンスは、はあ? と語尾を上げて頭を振る。

「ちょっと前になるけど、ほら、遠征から戻ったときに、
テマンの…覚えてる? 去年トクマンをかくまったときだって」

指を折りながらそういうと、チェ・ヨンはもう一度顔を手で覆って動きを止めた。

「テマンのあれか」

と手越しにくぐもった声で言う。
そうよ、あなた怒るとすっごい怖いんだもの! とウンスが言うと、
くくく、と脱力したように肩を揺らして顔をから手を外した。

「本当にあなたという人といると、なぜこうなる。
よくもまあ、俺を怒らせるようなことを次々と…」

そう言いながら、ちらとウンスを見ると、
ウンスはわたしのせいじゃないわ、と肩をすくめる。
チェ・ヨンは、わかりました怒らないと約束しますから、
と言いながら手でうながす。
ウンスは、覚悟を決めて口を開いた。





「それで、どういうおつもりですか、チョナ」

人払いの済んだ便殿の最奥で、玉座にもたれかかるように座る王に向かって、
チェ・ヨンの言葉は詰め寄るような響きがあった。

「と、言うと」

王はそう言ってから、すぐそばに立ったチェ・ヨンの目つきを見てすぐ、
あの件か、と気まずそうに目をそらして呟いた。
ウンスから伝わったか、と尋ねられて、チェ・ヨンは深くうなずく。

「この際、お世継ぎが必要であるということは置いておきましょう」

低く抑えられてはいるが、荒ぶりを秘めた声に、
王は驚いたようにチェ・ヨンに顔を戻した。
高麗の太子の問題について責められると、王は思っていた。

「あれだけ、……あれだけ願って得た御子を、
ひとに託そうというのはどういうわけか、
あなたのお口から直にお聞きしたい」

そうチェ・ヨンが言うと、王は軽くうつむき、顔の前で掌を合わせた。
ふむ、そうきたか、と呟いて、合わさった掌越しに、チェ・ヨンを
ちら見する。

チェ・ヨン、と呼びかけた声は、わずかに不機嫌な気を孕んでいる。
久しぶりに名を呼ばれて、今度はチェ・ヨンが驚きを顔に走らせた。
余はな、子を手放す気などない、王の口から思いがけない言葉が出て、
チェ・ヨンが眉をかすかに動かした。

「覚えているか」

何のことかわからずに、チェ・ヨンは王の顔をじっと覗きこんだ。

「どうしたのです」

王が何も言わぬので、不躾にも腕をつかむ。

「言ってください」

顔を上げた王の顔色が青白いのに、チェ・ヨンは、はっと息を呑む。

「王妃がさらわれたときのことを」

あの時のことを思い返すと今でも、ほら、
と言って袖をめくり差し出した王の腕が粟立っている。
十年も前のことだというのにな、と王は呆れたように腕を撫ぜてから
袖で覆いなおした。

「王妃とその子の命を思うて、余はすべてを投げ打ってあの者に哀願した。
一言一句覚えておる。思い出したくないが」

王位を差し出した、ぽつりと呟いて、王は自嘲で唇を歪める。
チェ・ヨンはわずかに俯き、奥歯を噛みながら顔を上げた。

「余はあの時より歳を経て、少しばかり利口になった。
手ひどいことも、できるようになった。そうは思わぬか」

問いかけるように言われて、チェ・ヨンはこくりとうなずく。
王は指で眉根を揉むと、そのまま動きを止める。

「しかし、しかしだ。余はまた同じことをするぞ」

王はそばに立ったチェ・ヨンを見上げるように顔を上向けた。

「王妃と子に何かあれば、余はまた同じことをしてしまう」

我が子はどれほど付け狙われるであろうな、と口の半分だけが苦く笑う。

「余がそうであったように、我が子も遠い地で人質となることを求められよう。
元国には抗えよう。しかしだ、明国は求めぬか。どうだ。拒めばどうなる」

自問自答のように、言葉を紡ぐ王を、チェ・ヨンは不動のまま見ていた。

「王のつとめとは何だ。国を永らえることであると決め込んでおった。
そのためにはすべてを駒にせねばならぬと」

できるわけがなかろう、王は目の当たりを手のひらで覆うと、
長いため息をついた。
そして、目を隠したまま、言葉を続けた。

「だからな、チェ・ヨンよ。
余は卑怯な手を使うことにしようと思う。
我が子を隠し、ひとの手で育てさせ、しかも、妙齢になり、
その時にこの国がウンスの言うほど悪しきありさまでなければ、
子が我が世継ぎであると明かそうと思う」

王は顔から手をどけた。
血走った目が、チェ・ヨンの目とひたと合わさる。

「預け先の人物は、余が保証する」

信頼に足る人物だ、とチェ・ヨンとしかと目を合わせたまま、王は続ける。

「余の子を我が子のように愛しみ、命をかけて守るだろう。
またその者は、手放した親である余を憎むようには仕向けまい。
成人した後に、余がその者から子を取り戻すとしても」

王はそこまで言って、黙り込んだ。
二人の間に、しばし沈黙が横たわる。
チェ・ヨンは低い声で言った。


「それで、よいかと」



にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村
by kkkaaat | 2014-09-17 23:55 | 北斗七星【シンイ二次】 | Comments(24)

二次小説。いまのところシンイとか。
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30
最新の記事
カテゴリ
記事ランキング
最新のコメント
ウンスノートから読んでし..
by 比古那 at 13:31
あー、やっとたどり着けま..
by 比古那 at 10:48
みちさん お元気でしょ..
by mm5210 at 12:59
更新を待ってるの
by やっちゃん at 07:58
更新を待ってるの
by やっちゃん at 07:58
ブックマーク
以前の記事
検索