筆記



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【シンイ二次】緑いづる19 ―チュンソクとテマン、勤しむ―


「さぶっ」

晩春の暖かさも、岬の突端では吹き飛ばされてしまうようで、チュンソクはぶるりと身体を震わせた。
わずかに飛沫の混じった空気が、余計に身体を冷やしている。

「来ねえなあ」

夜目はきく方だが、遥か遠くの黒い水平線まで船影はない。
船戦の経験もあるチュンソクは、ここ数日は東からの風が強く、船の到着は早くて明日の夜半だろうとおおよその見当をつける。
そうなると、こんな場所にいるだけ損だが、それでも張番を立たせぬことはできないので、まあ納得して海を眺め続ける。

先ほど、海の中をかすかに光る何かの群れが浮かび上がり、静かにまた沈んでいった。
テホグンに知らせたくてウズウズするのだが、二度目の報告に言ったときに、来なくてよいと言われたのを思い出して、ぐっと堪える。
もう二刻ほどもここにいて、細い三日月が雲に隠れたり見えたりしながら、だいぶ位置を変えた。

ぐっとせり出してくるあくびを、誰も見ていないのに、かみつぶす。
一言で言えば、退屈なのだ。

「まあ、あれだ。やはり、報告にまいろう」

チュンソクは誰に聞かせるでもなく言いながら立ち上がる。
うん、あれだ、一定の間隔でなにごともないことをお知らせするのも、一つの任務である、うん。
自分に言い訳するために、声を出してつぶやきながら、チュンソクは意味もなく、身体から埃を払った。

「よしっ」

自身を納得させるように言うと、チュンソクは足取りも軽く、岬を降りる道とも言えぬほどの踏み分けをかけるように、歩きはじめた。
できるだけ音を立てぬように降りて、雑木を抜けると浜に出る。
先ほどまで、ヨンが座っていた流木にその姿はなく、チュンソクはあたりを見回した。
ふと何かに気づいて、足音も息も殺してかけよる。

(これはたしか…!)

ウンスが先ほどまで羽織っていたチョゴリではないか、と拾い上げた手が震える。
はっと姿勢を低くして、あたりを油断なく見回すが、特に人影も争った形跡もない。
まずは浜小屋の中を確かめようと、一歩踏み出そうとしたところに、後ろから駆け寄る足音がした。

「テマナ、これを見――」

言いかけたところでいきなり口をふさがれ、引きずられるように浜の端まで連れていかれる。
チュンソクは敵に見られてでもいるのかと、きょろきょろとあたりを見るが、特に気配も感じられない。
が、テマンの顔は真剣そのものだ。

「おい、どういうことなんだ、説明してくれ。これを見ろ、すぐにテホグンにご報告せねば――」

ようやく手を外されて、早口でテマンに言い募ると、しっ、と言われてそっと背中を向けられる。
背負われて眠っているミョンソンを見て、チュンソクは声をぐっと低めて、テマンに顔を近づける。

「夫人に何かあったのか!?」

顔色を変えたチュンソクに、テマンが急いで顔を振る。

「ち、違う。何にもない! だ、大丈夫だ、テジャンもユ夫人も、あの、浜小屋の中にいる」

はあ? とチュンソクの口から声が出る。
テマンはもう一度、静かにしろ、ミョンソンが起きちまう、と繰り返す。

「二人が小屋の中にいるなら、なんだっておまえ、俺のことをこんなところまで」

とそこまで言って、チュンソクの動きがはたと止まった。
テマンがじーっと見つめるうちに、チュンソクの目が少しだけ大きく見開かれる。
口が声を出さずにゆっくりと開いて、手のひらにもう一方の手のこぶしを、ぽん、とゆっくり打ち付ける。

テマンがにこりと笑って、うんうんうんうん、とうなずく。
それに合わせるように、チュンソクもゆっくりと二度うなずく。
チュンソクの顔が、驚きから納得、そして、我慢できないように笑んで、二人してくくくとわけもなく笑う。
そして急にチュンソクは気がついて、ぐしゃぐしゃに握り締めていたウンスのチョゴリを慌てて開くと、砂をはらって申しわけ程度にたたみはじめた。





「あ」

テマンが小さな声をあげる。

「どうした?」

岬の突端で見張っていたチュンソクは、風が当たらぬよう、後ろの林の中で膝に赤ん坊を寝かせたテマンを振り返る。
半分居眠りをしていたテマンは目をこすりながら、起きちまった、と残念そうにつぶやいて、寝ろ、寝ろ、な、とささやきながら立ち上がるが、ふえふえとぐずる声が、チュンソクにまで届いてくる。

「どれ貸してみろ」

俺も父親だからな、寝かしつけくらいはお手のものだ、と言いながら受け取ると、よしよし、と言いながら小さく揺らす。
しばらくの間、チュンソクが奮闘してみるものの、ぐずりはだんだんと大きくなり、半分泣き声になってきた。

「な、なあ、プジャン。これ……乳をほしがってるんじゃ、な、ないか?」

口をぱくつかせ、手元に何度も指を寄せるしぐさに、テマンがチュンソクの顔を下から覗きこむ。
チュンソクは、眉をしかめる。

「俺もそう思っていたところだ」

しばらく、二人はじっと固まったまま、赤ん坊の泣く姿をじーっと見つめる。
どうする、とチュンソクが、低い深刻そうな声でテマンに問いかける。
どうしようって、とテマンが、口を尖らせると、

「い、行くしかないだろ」

とつぶやく。
だよなあ、とチュンソクが心底残念そうに言うと、テマンもはあとため息をつく。

「肩を落とすな、テマン」

おまえはよくやった、先ほどからもう二刻ほど引き伸ばした、いかなテホグンでも、とまで言ってチュンソクは言いすぎたことに気づいて、ううん、と咳払いでごまかす。

「まあ、あれだ。あまりお嬢さんを泣かせるのは、まずいだろう。あたって砕けろ、だ」

砕けるのは嫌だなあ、とテマンはつぶやきながら、赤ん坊をもう一度おぶう。
そうやって背負っても、今度は泣き止まないので、これはいよいよ仕方がないと、二人は顔を見合わせて、坂道を下りはじめた。





「プ、プジャン、たのみます」

テマンは泣き声が大きくなってきた赤ん坊を背中から下ろすと、チュンソクに向かって差し出す。

「ななな何を! おまえがお嬢さんを預かったんだから、おまえが行ってこい」

チュンソクは首と両手をぶんぶんと振りながら、それでもできるだけ声をひそめて言い返す。
お、おれがですか、とテマンは抱きかかえた赤ん坊と静まっている小屋とを交互に見て、首をかしげたり、あたりを助けでも求めるように見回したり、少々うろたえている。
が、これ以上泣かすわけにもいくまいと、意を決して小屋の扉へと一歩踏み出したところで。

「テジャン!」
「テホグン!」

内から扉が音もなく開き、白いソゴッ(肌着)だけをまとったヨンが、ゆったりとした様子で外に出てくる。
ほんのかすかに、小屋の中を気にするように視線が後ろに流れるが、そっと後ろでに閉じて、二人に歩み寄る。

「ミョンソンが乳を欲しがったか」

口を開きかけたテマンが言う前に、ヨンは低く落ち着いた声で、そう言った。
そのくつろぎながらも研ぎ澄まされた様子に、チュンソクはほうっと思わず息をのむ。
すぐに手を伸ばしてテマンから赤ん坊を受け取ると、腕にかかえて、もう本格的に泣き出しているのを柔らかい眼差しで見つめる。

「待たせて、すまなかったな」

小さくつぶやくように詫びると、赤ん坊の顔を見つめたまま命じる。

「チュンソク、このまま岬の見張りに戻れ」

チュンソクがイェ、と短く答える。

「テマナ、上にある荷物をこっちに運べ。運んだら、チュンソクに合流し、交互に仮寝を取れ」

わかりましたっ、とテマンも歯切れよく返事をする。
チュンソクとテマンは、ちらりちらりと互いに視線をやりとりして、思わず微笑んでしまう顔をひきしめながら、小さくうなずきあう。

「では日が昇りましたら、一度ご報告に参ります」

それと、とチュンソクが手に持ったチョゴリを遠慮がちに差し出すと、ヨンは一瞬何だろうという顔つきをしたが、ああとすぐに思い当たって、くっと微かに笑いながら受け取った。
じゃあ俺はすぐに荷物を、とテマンが言い、二人がいっせいに駆け出そうとする。

ヨンは待て、とそれをとどめた。
二人は、踵を返しかけた姿勢のままで、動きを止める。

「二人とも……礼をいう」

ヨンが腕に赤ん坊を抱いたまま、顔を上げて、小さくうなずき、そう言った。
二人は、抑えられないようににかっと笑うと、頭を下げ、そのままそれぞれの持ち場へと走り出した。




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by kkkaaat | 2016-04-25 19:35 | 緑いづる【シンイ二次】 | Comments(28)

【シンイ二次】緑いづる18 ―二度目―


「いいから、船影が見えるか、さもなければよほど剣呑な兆候でもなければ、岬にいろ」

いいな、とヨンが念を押す。
イェ、とチュンソクはわずかに残念さをにじませた声で答えると、くるりときびすを返して、小走りにまた来た道を戻っていった。

チュンソクが来たのはもう二度目で、一度目は藪に野犬かと思ったら狸が出たと報告に来て、今度は何かに驚いた海鳥の群れが夜の空で騒いだと知らせに来た。
そうしたことはいちいち報告に来なくていいんだと、ヨンが告げると、少し肩を落とす。
とにかく何か仕事をせずにはいられない男だと、ヨンは呆れながらも感心する。

なんとはなしに見送って、岬へと登る茂みにその姿が隠れると、ヨンはまた海へと向き直って、浜小屋の前に無造作に置かれた流木に腰かける。
暗い海は凪いでいて、ごくたまに海鳥の鳴き声や風が松林を揺らす音が聞こえるだけだった。

――はあ。

チェ・ヨンはもう何度目かになるため息を静かに吐き出した。
あたりの静けさとは裏腹に、ヨンはおのれの中に時折立つさざ波に胸をざわめかす。
開京までは何事もなく帰れそうだというところまでこぎつけたが、今度はその後のことが、頭の中に次々に浮かぶ。
ヨンはそれを振り払うように、目をつむり頭を降った。

砂を踏む足音が近づいてきて、ヨンはうんざりしたようにがくりと首を前に倒す。
あまりに静かで安穏とした漁村の様子に、足音を消す気配りも疎かになっている。
足音は慌てた様子もなく、大きな問題が起きたとは到底思えない。

今度もまた魚でも跳ねたか、と振り返りもせずに言い放つ。

「あっちに行け」

わかったわ、と答えた声にヨンは跳ねるように立ち上がった。
振り返ると、半分後ろを向きかけて足を止めたウンスが、伏し目がちに立っている。
違う、チュンソクだと、と早口に告げると、ウンスは意味がわからないまま立ち止まる。

「いや、さっきまでチュンソクが、いて…」

ゆっくりと顔を上げたウンスと目が会うと、それ以上の言葉が止まる。
前で腕を組んで、なんとなく気まずげに笑ってみせるウンスに、大股で近寄ってその前に立つ。

「どうしました、何かありましたか? ミョンソンは」

矢継ぎ早に尋ねると、ウンスが肩を少し持ち上げて、上目遣いで答える。

「別に何も」

ただ、ミョンソンが泣き止まなくて、困ってたらテマンがおんぶで連れ出してくれて、一人は危ないからあなたのところに行けって、と少し口を尖らせながら早口で言う。
言いながら、徐々にウンスの顔がうつむいていき、最後の言葉を言うときには、ヨンにはその横顔にかかった前髪と耳しか見えないほど下を向く。

「少しの間、面倒を見てくれるって…」

そう普通の口調で言いながら、細い月明かりに照らされた耳朶が暗がりでもわかるほど赤く染まっているのにヨンは気づいた。

辺りの唯一の音だった波音が、突然遠ざかる。
その理由が、自分の中で突然早まった血流が起こす耳鳴りだと知って、ヨンは一瞬にして喉がからからに乾く。
ゆっくりと確実に手を伸ばすと、すくい上げるようにウンスの頬をはさんで、そっと上向ける。
夜の空気にさらされているのに、その頬は熱くて、ヨンは指から何かが這い上がってくるのを感じた。
夜の中で少しだけ明るく潤んで光る、焦がしたような茶の瞳があらわれる。
近づいていく自覚もなく、ヨンは静かに溺れるよう唇を重ねる。

打ち寄せる波の音が三度繰り返されて、一度それが離れると、

「ああ…」

ヨンがため息と感嘆ともつかぬ声を、思わずもらした。
この感触を、これまではいつも途切れてしまうこの感触が、あまりにも。
天にものぼる、という言葉が思い浮かぶ。

「なあに?」

ウンスは照れくささに、少し笑いを含んだ声で尋ねる。
ヨンは、呆然としたまましばらくの間、ウンスの目を、そして唇を見て、息を吐く。

「なにも…」

そう言いながら口元をほころばせて、ヨンは今度は顔を傾けて、深く唇を重ねた。



そのままウンスの背中に手を回すと、紐がほとんど解けていたチョゴリがゆるく背中をすべって、ウンスの首元がはだけた。
赤子の世話をしていて、結び忘れたのか、それとも解いてきたのか、と考えながら、と唇から首筋へ、そして鎖骨の窪みに鼻先を擦りつける。
解いてきたのならなおいいのに、とチョゴリをつかんだ手を引きずるように下ろすと、いつのまにか力が抜けたように横に垂れたウンスの腕から抜きさる。

残ったのはくすんだ白のごわついた胸帯だけで、むき出しになった肩の白さと、四年前と比べるとわずかに丸みを帯びた曲線に、ヨンの目が大きく見開かれた。
ごくりと、喉仏が動く。
胸元にかかる息が、急激に熱さと速さを増して、ウンスは小さく身体を震わせた。

ヨンは上衣をそのまま砂地に落とすと、背中の肌に手を這わせた。
ウンスが自由になった腕を、おずおずとヨンの首に回すと、ヨンはそのままぐいと抱き上げて、ほとんど蹴るように浜小屋の傾いた扉を開けた。

振り返りもせずに、後ろ足で蹴り閉めると、小屋の中を見回してウンスを立たせる。
ウンスはこの後どうすればよいのか見当をつけられず、紅潮した顔のまま緊張気味に立っている。

破れ小屋のあちらこちらから、ほんのわずかな夜明かりがさして、漁の道具の所在を知らせていた。
ヨンはまっすぐにウンスと目を合わせたまま、自らのニルマギ(着物)から腕を抜くと、網の上に放り投げる。

「くそっ、こんな場所で」

ヨンはウンスをやすやすと抱えて、着物を敷いても硬いそこに横たえながら、小さく悪態をつく。
ここでいいかと聞くことも忘れて、横たえた胸帯の紐をもどかしそうに両手で解く。
その邪魔な布きれを、握りつぶすようにつかんで剥ぎ取ると、ウンスははっと胸を手で覆った。

「なりません」

宝物を隠された子どものように、ヨンは反射でウンスの両手首をつかむと、思わずウンスの顔の両側に押し留める。
痛いほどに腕にをつかんだまま、ヨンは白い身体と豊かになった胸に目を奪われて、まばたきもできずに凝視する。
ヨンの荒っぽい振る舞いに、ウンスが思いのほか強くあらがって身体をひねると、ヨンは目をしばたたかせ戸惑ったように、急激に手の力を弱めた。

「嫌ですか?」

珍しいほどの弱気な声に、ウンスは首を振りながらまたそっと胸元を覆う。
嫌なら来ないし、と張り詰めた声でウンスは短く答える。

「でも、あの、ちょっとっていうかすご…く…緊張してる…かも」

ヨンを見上げて、それでも引きつったような笑顔を作ってみせるウンスに、ようやくヨンは、二人の逢瀬がたった一度であった事実を念頭に登らせる。
長く長く息を吐き、力を抜いてウンスの肩に額を押し付ける。

「頭に、血が…のぼりまして」

言いわけを口にしながら、今度はそっと両手の中にウンスの身体を閉じこめるように抱きしめる。
会ったころにはうねっていた髪が、今はさらさらとヨンの頬を撫でる。
薄いパジ越しにも、ヨンがひどく苦労して自分を抑えていることが、ウンスにもわかる。
ずっとこうしたかった、という切実な呟きに、ウンスの身体から強張りが少しずつ溶けた。
おずおずとウンスの手が上がって、ヨンの頭を撫でる。

「あのね、遠慮はしないでいいからね」

でも大事にして、とウンスがヨンの髪にそっと口づける。
ヨンは辛抱強くこらえていたが、それでもウンスの肌の誘いに負けて、肩から少しずつ唇を下にずらして、胸の柔らかななぞえを唇で触れるか触れないでたどる。

「約束いたします」

ヨンはそう答えるとようやく、四年ぶりに、我を忘れた。




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by kkkaaat | 2016-04-20 23:25 | 緑いづる【シンイ二次】 | Comments(24)

【シンイ二次】緑いづる17 ―テマンの子守―


「ね、どうしたの。何が嫌なの」

ウンスは、自分自身が半べそをかきながら、小屋の中をうろうろと歩き回っていた。
腕には先ほどから泣き止まないミョンソンがいる。
乳もよく飲み、お腹は膨れ、ゲップもし、濡れて気持ちの悪いところもなく、熱もない。
ただうまく眠りに入れないのか、抱いても揺らしても、ぐずぐずと泣き続ける。

ウンスはもう一度、お腹を触診したり、口の中を見てみたり、手足を確かめたり、赤ん坊の体の具合を見てみるが、どこにも悪いとこはない。
こういうふうに、赤ん坊がだらだらと泣き続けることがあるというのは、お産を手伝ってくれた村の女たちが教えてくれてはいたし、これまでにも経験してきた。
しかし、今のようにできれば静かに身を潜めたい時に、こうも長く泣かれると、自分もわっと泣きたいような気持ちにおそわれる。

「疲れちゃったかな、大変だよね、寝たいんだよね」

分かれ道からまる一日、先を急ぎたいと、あまり休みも取らず、この小さな集落まで来た。
五、六の家族が集まっただけの漁村で、そこの港とも言えぬほどの小さな入江で、船軍の迎えの船と落ち合う手はずになっていると言う。

――アン・ジェに船軍から漁船に偽装した船を一艘出すよう、手配を頼んである。この三日のうちには船影が見える手はずだ。

そうヨンが説明したのはこの漁村に向かう道すがらで、着いたのはもう暮れた後だった。
ウンスと赤ん坊が過ごせる場所を見繕うと、

「この漁村の人間は、高麗側に利する者ですから、ここは安全ですが、念のため、テマンとともに隠れていてください。」

と言って、ヨンは入江を見渡す浜子屋に、チュンソクは岬の突端で見張りをと、すぐに出て行った。
ウンスは、テマンとともに、浜から少しだけ登った、今は使われていない寺の建物の中に身を潜める。

火を焚くこともできない廃屋は、暗く心細く、それがまた赤ん坊に伝わって泣くのじゃないか、とウンスは自らを叱咤する。

「自分が泣いてちゃだめでしょう。このくらい、大丈夫、大丈夫」

そう言ってぐいと目元をぬぐう。
少し、子守歌でも歌ってみようかと口を開きかけたところで、辺りをぐるりと見て回ってきたテマンが、戸口に立って手招きをする。

「な、泣きやみませんか?」

ウンスが歩み寄り、口をへの字にしてうなずくと、テマンはその腕に抱かれた赤ん坊を覗きこむ。

「こんなこと、めったにないのよ」

それがまるで自分の責任でもあるように、ウンスはテマンに言いわけする。
テマンは、ちょっと貸してみてください、と言うと、少し涙をためたウンスからひょいと赤ん坊を受け取る。
そして、するりと懐から帯紐を出すと、慣れた様子で背中におぶってしまった。
首がすわったばかりなので、ウンスは手を少し伸ばしてみたり、赤ん坊の顔を覗きこんでみたり、テマンの回りをうろうろするが、当の赤ん坊は、急にぶんと背中に担ぎ上げられたのに驚いて泣き止み、きょろきょろと辺りを見回している。

「テジャンの、う、上衣を一つ、かしてください。あまり厚くないやつ、お願いします」

テマンが頼むと、ウンスは言うがままにこくこくとうなずいて、奥の荷物に小走りに寄って、上衣を両の手に一枚ずつ持ってくる。
こっちがいいです、とテマンは薄手の方を手に取ると、ふわりと自分ごとその衣を羽織って、前紐を緩く結んだ。小さく揺さぶられている背中の赤ん坊は、夜の静けさと春の風、そしてテマンの背中の温もりに頬を寄せて、先程までのグズグズが嘘のようになんだか眠そうにしだしている。

何がなんだかよくわからないまま、言うなりになっていたウンスに、テマンはにこりと笑ってみせる。

「お、俺はすこしばかりあたりを散歩してきます。
こんなにあったかい夜ですから、風邪も、ひ、ひかせやしません」

夜に赤子が泣いてどうしても泣き止まないってときは、おぶって外を歩いてやれって、まえにマンボ姐のところで子守をさせられたときにならいました、とテマンが話す。
客の赤子が泣くと、ゆっくり食えないから、お前ひとまわりしてきなって背負わされるんです。

「そのかわりに、お、おわったら、ク、ク、クッパが食えるんだ」

クッパを食べる仕草をしながらテマンは言う。
木にのぼったりしやしません、いま何にもいないのも見回ったばっかりです。
ただ、ゆーっくりこのあたりを歩くだけ、とテマンは上目遣いで、安心させるように手をくるりと回してこの近辺というのを示すと、ウンスをなだめるように言う。

「眠ったら、ここに戻って、ちょっとだけ寝かせます。腹が減ってまた泣いて、どうにも乳が恋しいようだったら、連れていきます。こ、これっぽっちも危ないめにはあわせません」

約束します、とテマンがぐっと力をこめて言うと、ウンスは気圧されるように、うなずいた。
ミョンソンはテマンの背中が心地よいのか、今のところ泣き止んでいる。

「じゃあ、ちょっとばかし出かけてきます」

テマンは軽快な足取りで、開け放した建物の扉から赤ん坊を揺らさないよう滑らかに出る。
それから一度、どこかにむかって歩き出し、姿が見えなくなった。
が、すぐに数歩戻って顔を見せると、ぼさっと突っ立っているウンスに向かって

「少なくとも二刻か三刻は戻りません。朝まで寝てくれりゃあ一番いいんだけど」

だから、その、時間はあります、あと一人でいると危ないからテジャンのところに行ったほうがいいです、と言い残して今度は本当に姿を消す。
無言のままそれを見送ったウンスは、たったいまテマンが口にしたことの意味をようやく飲みこんで、少しだけ頬が熱くなるのを感じた。




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by kkkaaat | 2016-04-18 22:50 | 緑いづる【シンイ二次】 | Comments(19)

ウンスノート 8枚目 ―百年前ノ伍


「8枚目」


息子に関しては、傷口もふさがり、消毒も基本的に必要ないだろう。
父親に関しては、消毒を継続。一時的に化膿が見られた箇所があり、セファレキシンを一週間投薬。断薬後も悪化はなく、経過良好。
最近は言葉でのコミュニケーションも順調。
基本的には高麗の方言だと考えればいい。ものの名前など元国由来のものが多く、戸惑うが単語の暗記だから問題なし。受験勉強の女王健在。

昨日、以前皇宮で見たノートの内容を思い出して、(塗りつぶし)の開く日付等、再度書き出してみた。
数値を思い出せない場所は、計算方法を覚えていたので、再度計算。
今年の夏の終わりと、来年の初春に一度ずつ開くはず。
絶対に開く! 
計算してみて、すうっと心が軽くなった。
二度も開く珍しい年だからなのか、期日以外にもごく弱くつながるときがあるようだが、人は通れない。草を投げ入れたら、吸い込まれたときがあったので、一応つながってはいるよう。

お世話になっている陰さん御夫婦に、夏までの滞在を願い出る。
親子の治療が終わったら、自活の道を探そうと考えていたけれど、そうもいかなくなった。
今、この状態で新しいことを始めることはできない。
優先順位は、以下。

一、自分の健康状態を良好に保ち、出産に向けて準備をすること
二、(塗りつぶし)へ入るタイミングを逃さず、あの人の元へ帰ること
三、戻れなかった場合を想定して、暮らす道を探しておくこと

死ぬほど不安だけど、なんなんだろう、このわくわくする気持ち。
頑張ろうって気持ちが、お腹の底から湧いてくる。
ファイティン、ウンス!





母親がこの紙を両手に持ったまま、ぴょんと急に飛び上がるように立ったので、
父親と男性は、驚いて目を大きく見開いたまま、ぽかんと母親を見た。

「ねっ、ねっ、ウンスッ、ウ、ウンスッて!」

母親の手が、紙を持ったままぶるぶると小刻みに震える。
父親は、慌てて立ち上がって、その手首を自分の両手でつかむと、落ち着かせるように顔を覗きこむ。

「ねえ、あなたっ! ちょっと、ここっ、ここ!!」

必死に訴える母親を父親はうなずきながらなだめる。

「わかった、わかってるから。ほらちょっと、座りなさい。
ウンスの名前が書かれているってのは、事前に言われていたろ?」

まだそれとあの子に何の関係があるかはわからないと、ちゃんと説明を受けたろう、と父親が言うと、だってだってと母親が紙を父親につきつける。

「わかったよ、確かにウンスと書いてある」

だからね、おまえ、他のところに書いてないか、きちんと探してみようじゃないか、父親がそう言うと、母親はぶんぶんと頭を縦に振って、次の紙を急いで手にとった。




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by kkkaaat | 2016-04-17 22:15 | ウンスノート【シンイ二次】 | Comments(18)

ウンスノート 7枚目 ―百年前ノ肆



「7枚目」



妊娠していると言われた。
計算をしてみた。
計算はあっている。
どうしよう!!!!!






「ねえ、ちょっとお父さん」

ウンスの母親が少し興奮した様子で、紙を見せる。

「これ、これ!」

落ち着きなさい、と父親が疲れた声で言う。
どうしよう、どうしよう、と母親は自分のことのように繰り返し読んでいる。

「この紙束がなんなのか、わからないんだから。
あまり変に思いこんではいけないよ」

父親がそう言うと、ウンスの母親ははああと大きく息を吐いて、目を瞬かせる。

「そうよねえ…」

そうなんだけど、と母親はつぶやいて黙った。





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by kkkaaat | 2016-04-17 22:10 | ウンスノート【シンイ二次】 | Comments(0)

ウンスノート 6枚目 ―百年前ノ参




「テジャンってのが、あの人みたいよね」

母親がつぶやくと、まだわからないが、どうやらそのようだ、と父親が言う。

「書かれた時期もさまざまですし、一人が書いたともわかりませんから、同様の表記の“あの人”でも同じ人をさしているとは限りませんよ」

ソファの背もたれに身体を預けて、じっとしていた男性が、急に言葉を挟む。
そうよねえ、と言いながら、母親はもう一枚手にとった。






「6枚目」


一週間ほど、微熱、嘔吐感が継続している。
何かの感染症を疑っているが、劇症というほどでもないため、薬は様子見とし服用していない。
解毒後の内臓疲労から来るものかもしれない。
セカンドオピニオンを得たくて、村に医員がいないか聞いてみたけど、簡単な手当ができるという和尚様のところに連れていかれて、症状を伝えるのも半分ジェスチャーだから、いまいち伝わらず。
大丈夫だというようなお返事だったけど、あてにならない。
あとはお産を手伝う年上の女性がいるらしい。
助産師さんに見てもらっても、と思ったけれど、この時代だと薬師もかねていたりするから、明日合わせてもらうことにした。
午後に、心配した奥さんが小さなお椀にシッケをもらってきてくれて飲ませてくれた。
動けないほど具合が悪いわけではないのだけれど、早く診断をつけたい。




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by kkkaaat | 2016-04-17 22:03 | ウンスノート【シンイ二次】 | Comments(0)

【シンイ二次】緑いづる16 ―それぞれの道行き―

「あー、面白かった! 見たあ? あのヨンの顔!」

二手に分かれて、互いの姿が見えなくなった頃、馬車の中からくすくすと思い出し笑いの声とともに、投げられた声に、思わずジホが手で口元を押さえる。

「あんまりからかうもんじゃないよ」

マンボ姐が、くくっと笑いながらも、ハヤンを諌めると、いやああいつも意気地がねえよ、とマンボ兄が横から口を出す。

「やっちまう機会なんていっくらでもあったじゃねえか。
同じ屋根の下で暮らしてたんだし、俺らがいるのが気まずいんなら、
この移動のあいだは離れてたんだしよお」

かー、あいつもだらしねえなあ、と首をひねるのに、馬鹿だねえ、医仙はお産をしたばかりだよ、これだから男は、とマンボ姐がかばうように言う。
マンボ兄は鼻で笑って食い下がる。

「でもよ、あれだろ、俺たちが着いた頃にゃあ、さすがにもういい頃あいだろう」

草を食もうとする馬のたずなを引いて、前へと進めながらマンボ姐は答える。

「ヨンはねえ、医仙のことなるとまあ、前っからああじゃないか。
やたらに心配ばかりして甲斐甲斐しくてねえ、
水だって薬だって全部手ずから飲ませてやって、
だいぶん元気になった後だって、そりゃあこまごまと世話しててねえ」

壊れもんでも扱うようだったからね、今でもきっとそうなんだろうよ、と懐かしそうに言うマンボ姐に、シウルが付け加える。

「ありゃあ度を越してたぜ!
やれクッパは二杯食わせてやれ、水はいるか、酒はいるか、
いや病み上がりだから酒はだめだ、熱いってえと冷ましてやるから小さい椀を出してやれ、
俺はあんなヨン兄を初めて見たからさ、ちっとばかり呆れたよ」

ジホがまた笑いをかみ殺しながら、櫛はどこで買えばいいのか、服はどこで買えばいいのか、マンボ姐さんのところに聞きにきてたよな、と相槌を打つ。

「医仙のものを買うとは言わないんだけどさ、ばればれだったよな」

シウルがそう言うと、

「だからね、まあ今度のこともヨンなりに、機を見計らってるんだろうさ」

マンボ姐が微笑んで返す。
シウルはヨンたちが進んでいるだろう方角を、馬の上に立って手をかざして眺める。
それから小さく馬の背中をかかとで軽く蹴ると、だく足で進ませる。

「お前、弓よりこ曲芸の上達のほうがはえんじゃねえか?」

マンボ兄が感心したようにそう言うと、シウルは得意そうににやりと笑ってみせた。

「ねえねえ、もうひと方、おとりがいるんでしょう? 
あちらさんもひと芝居打つのかしら?
やっぱ無理よねえ、むさくるしいウダルチのおんな姿だものね、
あたしとは違うわよね~?」

ハヤンがヨンの気苦労などどこへやら、そんなことをぼやいていたころ。




えーっくしょいっ、とチュモが大きなくしゃみをした。
なんだあ、風邪か、女物の着物はスースーするからなあ、とトクマンが声をかける。

「なあ、トクマニ」

兵営を離れ、襲撃もない、ただひたすらにのんびりとした道行の中、とうとう箱馬車の中でかつらも外してしまったチュモが鼻の下をこすりながら、横のトクマンに話しかける。

「だからさあ、ちゃんとテホグンって呼べって言ったろ」

あくびをしながら答えるトクマンの声も、緩みきっている。
仲間だけの旅程に、すっかり昔のウダルチ同士に戻っている。

「なあ俺たち、これでいいと思うか?」

正直、おとりになっているとも思えないんだが、とぼやくチュモに、トクマンが答える。

「そうは言っても、二日にいっぺんは、偵察の気配があるんだし、いないよかましだろう」

うーん、とすっかり着くずれをなおそうともせずに、チュモは箱馬車の中であぐらをかく。
今からでも何人か追いかけて、何かしらお助けしたほうがよかないか、と膝を叩きながら言うと、横で聞いていたエジが首をふる。

「だめだ、だめだ。つけられたら相手の思うつぼじゃないか。
それにな、偽物でも俺たちがこのままケギョンまで行くことに意味があるのはわかってるよな」

少し声を低くして、細い目をもっと細めてエジが続ける。

「医仙が戻ったってのはコリョのテホグンチェ・ヨンの策略で、罠にかかって皆やられた、この一行もその罠のひとつだったってあちらさんに伝わりゃあ、それでいいんだ」

そうだ、その通りだ、とトクマンが答えると、聞いていたムサが驚いたようにそのつるつるの頭をぺちんと鳴らす。

「なーるほど、そういうことなのか! 
おりゃあずいぶんと楽な任務でおっかしいなあと思ってたんだよ」

というと、トクマン、チュモ、エジがいっせいに、わかってなかったのか! と声をそろえる。

「テホグンもご夫人も、ご無事でいらっしゃるだろうか」

チュモはため息をつきながら、簾から細く透けて見える空を見ながら、そうつぶやいた。



くちゅんっ、とウンスが小さくくしゃみをすると、ヨンがたずなを引いて、馬を寄せる。
馬の後ろに詰んだ荷から、自分の衣をすぐに引き出すと、何も言わずに身を乗り出してウンスの肩にかけた。

「大丈夫よ、暑いくらいだわ」

ウンスが眉をしかめてかけられた衣を、つまんで持ち上げると、念のためです、と脱がぬよう目顔で押しとどめる。

「大げさね」

と肩をすくめると、用心深いと言ってください、とヨンは答えた。
ウンスが身体を揺すって着物を背中側にずり落とそうとすると、手綱さばきで少しだけ下がり、さっとまたそれをもとに戻してしまう。

「もうっ!」

ウンスは短く抗議の声を上げたが、あきらめてそのまま馬を歩かせ続ける。
ヨンはまたウンスの馬の横にチュホンを並べると、満足そうな笑みを顔に浮かべた。
それからうつむいて、ヨンは、胸元の赤ん坊に向かって話しかける。

「お前の母は言いだしたらきかぬ人だ。
ゆえに、俺が面倒を見なければならぬことが多くてな」

思わず、二人の後ろに馬を並べているチュンソクとテマンがぷっと吹き出すと、ウンスは振り返り、鼻の頭にしわを寄せて、おかしな顔で睨みつけた。
街道は海岸へと伸びているが、そこから南へ続く脇道にヨンは馬を進める。

「このまま行くと、今晩にはつけるだろう」

ヨンがそう言うと、チュンソクとテマンはほっとしたように、顔を見合わせた。





by kkkaaat | 2016-04-14 22:33 | 緑いづる【シンイ二次】 | Comments(12)

シンイ視聴時期アンケート結果発表 その2


さて、アンケート結果まとめの後半です。

シンイの初視聴時期について知りたくてやったアンケートですが、思いのほか多くの方に「シンイを見たきっかけ」と「二次創作を読むようになったきっかけ」についても教えていただけました!
私にはほんとに興味深かったので、まとめてみましたので、よかったらおつきあいくださいませ。

【シンイを見たきっかけ】

一番多かったのは、やはり偶然の方でした。愛知の方は地上波での放映が早い時期にあったそうですね? たまたまテレビをつけていて目に入って、というのが多かったです。
ただし! 何の気なしに見始めて、すぐにテジャンのビジュアルに釘付け、というパターンが多いんです。たまたま予告編をyoutubeでちらっと見て気になって調べてとか、レンタルDVDやパンフレットの写真にひとめぼれで、とか偶然なんですが「運命感じた…!」な方の多いこと(笑)

やはり、ヨンビジュアルおそるべし…! 一話目の濡れマント、障子の横顔、あたりがキービジュアルみたいですね。

そして同点2位だったのが、ミノペンVS韓ドラファンです。あ、別に対立してないですね。
シティーハンターを見た流れでシンイへという方、相続者たち後にシンイへ、というのも合わせると、ミンホさんが入口というのはがっちりおられます。

対する韓ドラファンですが、韓ドラかたっぱし派もいらっしゃれば、ある韓ドラを録画していて、その後継がシンイでそのまま撮って見はじめたという流れで派も。さらにタイムスリップものを探して見てた(屋根部屋が気に入って、その後とか)という限定タイムスリップ派も複数、歴ドラファン、古装好きの方もいらっしゃいました。
韓ドラファンの中には、すでに二次をご存知で、ブログ村でシンイの二次が増えてきたので気になって見てみたらはまった、という方も数名。

その次に多かったのが、人に勧められて、という方。友達や妹さん、お母さんにすすめられて、はまられたということですが、中には勧められて一度目は挫折、でもあまりにも熱くオススメされて二度目に挑戦なさったらはまったという方も。その熱いお友達に私からもお礼を言いたいです!

それから、ヨンやミンホさんのことばかり言っていますが、ヒソンさんのファンで見はじめたという方も複数名いらっしゃいました。それと道明寺(それも台湾版)が好きで、その流れでという方も。何が入口になるかわかりませんね。

【二次創作を読むようになったきっかけ】

だらららららららーー(ドラムロール)、第一位は!

最後に納得できず、最終回がものたりず。

予想通りの結果となりました。圧倒的でした(笑)
最終回にこだわらず、はまりにはまっていたシンイが終わってしまってシンイロスで、ネットの旅へ、という方も含めると、ほんと多いです。
あまりにも本音丸出しというか、その時の驚愕感が伝わってきて面白かったので、ちょっとだけご紹介させてくださいね。

「最終回が信じられず、ネットで確認しようとして」
本当はこんなラストになるはずだった、というのがネットでわかるかも」
「この後、二人は幸せになるの?
ちゃんとした続きがあるんじゃないかと」

脚本家さんの話や制作秘話を求めてネットの旅に出たら、二次創作を発見しちゃったあなたです。ようこそ~(笑)
しかし、最終回が物足りないが怒りにつながらないで、欲求につながるんだから、このドラマ、すごいです。そこまでがよっぽど面白くなくちゃ、こうはならないですからね。

二位が、シンイについて調べていたら二次創作にたどり着いた、でした。
チェ・ヨンとかコンミン王って実在の人物なんだよね、とか、回収されなかった伏線とか、調べているうちにたどり着いたというパターンですが、これも、何か気になちゃって…という点では一位と同じ路線ですね。

三位は、私としては意外と少なかった「シンイの二次創作を探して」です。もともと二次創作を知っている方は、ハマりはじめるとすぐ検索に走る! そう、私も! 他の韓ドラの二次を読んでて、やけにシンイのブログ増えてきたな? と見てみたらはまったとか、あるあるでした。

しかしいただいたコメントでは圧倒的にシンイで初めて二次創作を知ったという方が多く、ちょっとびっくりというか、目からウロコというか。
私は自分も友達も、同人誌、二次創作をするのが普通、みたいな環境で育ってきたのでなので、よくコメントで、「ここのお話で二次小説というのを知りました」という書き込みをいただいても、あらやっぱり二次小説を知らない人もけっこういるのね、でもまあ8割がたご存知でしょ、くらいの感じで受け止めてました。

これ以外にも、この検索でうちが出てきちゃうのはちょっとまずいというか、申し訳ないないなあ、という感じの、シンイの本について調べていたら、とか三巻情報を探して「シンイ 小説」で検索していたら、という方々がけっこういらっしゃいました。
これはちょっとMETAタグ入れるなり、ping先減らすなり、検索にかかる順位を下げるように工夫します。

そのほかには、最終回のあらすじを検索していて、先が知りたくて検索をしてたら、あらすじブログを探していたら、というあらすじ派。友達や家族、韓流ショップの店員さんに二次を教えてもらった方も。

まずドラマにどハマリし、そこから二次創作を経て、長く一緒に楽しめるシンイという作品に本当に感謝です。
私もまだまだ楽しんでいこうと思いますので、どうぞよろしくお願いいたしますね。

最後にアンケートにご参加くださった皆様、
こーんな長々としたまとめをお読みくださった皆様、
本当にありがとうございましたm(_ _)m

いや、面白かったです(わたしが!)
このように皆様にご協力いただけると思っていなくて、結果を見て、非常に嬉しかったです♥




by kkkaaat | 2016-04-14 14:34 | シンイ雑記 | Comments(6)

【シンイ二次】緑いづる15 ―芝居の一座―


「ね、ちょっと、なんかたまってるんじゃないの? すと、すと…、なんて言うんだっけ?」

箱馬車の布簾を手で持ち上げて、中からハヤンが横を進む馬上のウンスに尋ねる。

「ストレス、です」

ウンスは藍の野良着に頭には笠をかぶって男装しているが、外の景色を眺めながらで、表情は明るかった。
問われるままに、ウンスが答えると、ハヤンはそうそう、それ、と手を叩く。
屋敷に隠れこもったときに、暇にあかせてずいぶんとウンスから天界語を習ったのを、スリバンたちは機会さえあれば使おうとするのだ。

「そうそれ、すとれす。すとれすが溜まってるのよ。いろいろ心配なんだろうけどさあ」

ウンスの横でチュホンを進めるヨンは小声で、黙ってろ、とつぶやいて、不機嫌そうに前を見つめている。
溜まってるのはそっちじゃないんだが、と先頭を進むチュンソクが誰にも聞こえない声でそうつぶやいた。

「昨日だってなーにを怒ってるんだか、宿の椅子なんか壊しちゃって、ねえ、わけわかんないわあ!」

ハヤンがヨンのむっつりとした顔にそう投げると、ウダルチの麒麟鎧を身につけて、今では大分伸びた髪を後ろで一つに縛ったジホが、急いで馬を進めてウンスと馬車の間に割り込み、無理やり窓の引き戸を滑らせ閉じてしまった。
中で、なにするのよ! と騒ぐハヤンに、珍しく髪を髷に結い、これまた麒麟鎧を来たシウルが、窮屈そうに鎧の位置を直しながら、壁越しに言う。
二人の鎧はよくよく見ると、ウダルチのものとは違い皮に色を塗った偽物で、胸の麒麟もなんだか今ひとつ粗っぽい。

「おまえなあ、今回の働きに免じて、ヨン兄も手を出さなかったんだぞ。
ぼっこぼこにされなかっただけ、運がよかったろ」

えー、なあにー、それ、あたしヨンアにぼこぼこにされるようなこと、何かしたかしら?
馬車の中から響いてくる声に、ヨンの目が少しばかり大きく見開かれた。
ウンスが横目でちらりと見ると、ヨンは小さく頭をふって息を吐く。
ヨンにだけわかるように、ウンスが少し決まり悪げに笑って肩をすくめると、ヨンもまたウンスにだけわかる程度に微笑んて目を合わせた。

しかしお互いだけにわかるように、と思っているのは二人だけで、ジホがそれとわからぬ程に顔をそらして細く口笛を吹く。
シウルはそれを肘でつついて、テマンにやめろと手で合図されている。

ウンスは気づかないまま、ヨンに馬を寄せてその胸元を覗きこむと、ヨンが馬上で身体をかがめて、抱いた赤ん坊の様子を見せた。
ウンスは赤ん坊の顔にかかった髪をどけようと手を伸ばそうとして、ずるりと滑り、ヨンは慌てて腕をつかんで鞍の上に引き戻す。

「気をつけてください」

ヨンが思わず笑いながらそう言うと、ウンスが口を尖らせて、ちょっと気を取られただけよ、と言い訳する。

「だそうだ、ミョンソン」

ヨンは指で赤ん坊の髪の毛をかきあげながら、そう言った。
そんな様子を、マンボ姐がゆっくりと馬を進めながら、眺めている。
スリバンが合流して一時人数の増えた一行だったが、それもつかのま。

「おい、ここだぞー」

マンボ兄が、だいぶ先の分かれ道に立って、声を上げる。
すぐに、一行が追いつくと、ジホとシウル、マンボ兄妹、箱馬車は脇道へと馬で入り、ウンス、ヨン、テマン、チュンソクはまっすぐ進む街道に残る。

「マンボ姐さん」

わざわざ自分の馬を降りて、マンボ姐がそばまで来ると、ウンスは自分も馬を降り、手を握って名前を呼んだ。
マンボ姐はぎゅうとウンスの手を握り返して、そんな顔をするもんじゃないよ、と答える。

「なあに、ケギョンまであとちょっとじゃないか。すぐにまた会えるさ」

ウンスはそう言われて、涙のたまった目で、それでも笑顔をつくりながらうなずいた。

「気が利かない男どもに囲まれて、気が休まらないだろうがね、あと少しの辛抱さ」

お前たち、頼んだよ、まああたしが頼まなくたってこいつらはやるだろうけどさ、と言われて、テマンとチュンソクが深くうなずく。

「この借り、高くつくよ」

マンボ姐がヨンに顔を向けると、ヨンは目を見てこくりと無言のままうなずいた。
後ろでマンボ兄も、うんうん、とうなずきながら、返してもらうんだから、死ぬんじゃねえぞ、とつぶやく。
そこに、馬車の扉が勢いよく開いて、ふたたび女の格好をしたハヤンが顔を出した。

「借りなんて気にしなくていいわよ! だってこれ、楽しいんだもの!」

そう大声で言い放ったハヤンに、皆は苦笑いを浮かべる。
それに今度は、馬車にこもらないでいいんでしょ? とハヤンはしなを作りながら念を押す。

「このままソギョンまで、王と王女を助ける天女とえらあい武士の恋物語の芝居を打つ一座だってさんざん触れ回っていくから!」

この美しい医仙をご覧になりたきゃ、西京(ソギョン)までいらっしゃいってね、とハヤンが言うと、ウンスはこぶしを口に当てて笑いをかみ殺す。
ハヤンがウンスの癖の髪の毛をかき回す仕草を大げさにやってみせると、もうたまらなくなってウンスは大きな笑い声を上げた。
ヨンはため息をついて、じろりとハヤンを見る。

「ソギョンにて一度地下に潜り、気配を残さず帰京してくれ。次の落ち合う場所は、ピョンナンド(碧瀾渡、開京にもっとも近い港)だぞ」

ヨンがそう言うと、人使いが荒いわね、とハヤンがベロを出す。

「はでにやるぜ! 医仙が現れたって噂の真偽があやふやになるくらいにな」

シウルが見世物のように馬の鞍に、一本足で立って見せると、ウンスは今度は感心して口を手で押さえた後、パチパチと拍手を送った。

「ウダルチは、そのような曲芸はいたしませぬが」

チュンソクが断固とした口調で抗議すると、芝居の宣伝だからな、いいんだよ、とジホが答える。
まあせいぜい派手にやってくれ、とヨンが言う。

「やつらには、不確かな情報に惑わされて、高麗の罠に落ちたと思ってもらわねばならぬゆえ」

ヨンはそうつぶやくように言いながら、ぎゅっとたずなを握り締める。

「まかせておけ」

マンボ兄がしゃがれ声でそう答え、スリバンの皆がいっせいにうなずいた。





by kkkaaat | 2016-04-12 22:59 | 緑いづる【シンイ二次】 | Comments(14)

シンイ視聴時期アンケート結果発表 その1

皆様、アンケートへのご協力、ありがとうございました!
ふとした「みなさん、いつごろからシンイを見てるんだろう?」という疑問でしたが、たくさんの方にお答えいただき、なんだかすっきりした気持ちです。

ブログとかって、もちろんコメント欄での交流はたくさんあるんですが、基本的にこちらが見られる立場、読み手の方の姿は見えづらいんですよね。
私はどちらかというと、お届けする相手の姿をイメージできたほうが書く手がはかどる方なので、今まで訪問者数という「数」だった方々が、「何年頃からシンイを見て、二次を読んでるシンイファン」と具体的な姿になって、すごく嬉しいです。

総勢311名の方に、ご投票いただきました。
そしてとてもありがたいことに、たくさんの方の「シンイを見始めたきっかけ」と「シンイの二次小説を読むようになったきっかけ」を教えていただけました。
その投票結果やコメントについてまとめてみましたので、一緒にお楽しみいただければ幸いです。


アンケート結果は以下の通りです。

2013年KNTV 4.5%(14)
2013年BSフジ 19.6%(61)
2014年TVで 19.9%(62)
2015年TVで 15.1%(47)
2013~2014年にDVDか視聴購入で 19.1%(60)
2015年にDVDから視聴購入で 8.4%(26)
今見ている途中 0.2%(2)
実は見ていない 0.3%(1)
その他 12.2%(38)

【全体分布の傾向】

ちょっとアンケートの項目設定をあまり考えずにわりふってしまって、あてはまらな~い! という方もいらっしゃり、いただいたコメントなどから私の方で振り分けさせていただきました。そんなに厳密じゃなくてもいいですもんね? すると。

2013年 39%(120)
2014年 36%(113)
2015年 23%(73)
2012年 0.01%(3)
今見ている途中 0.01%(2)


まず、本国での2012年の放映を含め、2013年の日本初放映時期組が全体の4割。つまり少なくとも3年半近く、シンイ界隈にひたってらっしゃる廃人が百人以上と…!

シンイ、なんて罪深いドラマ…!(大げさ)

いやでも、大げさでもなんでもなく、これってけっこうすごいことですよ?

初期ハマリの方は、予告編やポスターのビジュアルにやられて、とか元々ミンホさんのファンで、とわりと待ち構えて見た人が多かったようです。ここの割合が多めなのは、当ブログがやはり2013年開設なので、そこらへんからお読みいただいて方が多いというのと関係していて、シンイファン界隈では、実際にはもう少し、新しく入っていらっしゃる方も多いんじゃないかと思います。

そして、ほぼそれに匹敵する2014年組は、たまたま朝テレビを見てたらやってて、とか録画していたものの後続番組がシンイで、とか、CSで一挙放送をしていて、ふとしたきっかけ組がわりかし多いようです。目を挙げたら、ヨンのあの障子をなぞるシーンでとか、一瞬目に入ったヨンのビジュアルに打ち抜かれてとか、運命的な出会いをした方もいらっしゃり、シンイ…というか、ヨンのビジュアルのすごさをひしひしと感じました。

だってテレビを見ていて、目に入ったとたんに目が離せなくなったってどこの少女漫画? っていう出会いですよね?

2015年つまり昨年の再放送でがっつりはまられた方も、全体の1/4もいらっしゃいました。こちらもきっかけはほんといろいろ。ミンホさんのファンだったり、相続者たちを先に見て、それからシンイを遡ってご覧になった方や、もちろん友達に勧められたという方も。

そ、そして、現在進行形の方もいらっしゃいましたよ!
自分の好きな別の韓ドラの二次を読んでいたら、そこのサイトの方がシンイにはまって二次を書き出して、それを読んでシンイを見出したという。

実は見てない、の方がお一人いらっしゃったんですが、コメントを読みますときちんと見ておられて、たぶん押し間違いでした(笑)


(二次を読まれたきっかけなど、その2でまとめさせていただきまーす。なので続く)




by kkkaaat | 2016-04-12 21:20 | シンイ雑記 | Comments(4)

二次小説。いまのところシンイとか。
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