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筆記



ウンスノート 10枚目 ―百年前ノ漆

「10枚目」


遠い千年の昔、伝説の名医華佗は、内臓の病、外傷、毒傷から長患いの持病まで、あらゆる病を治した。
とりわけ手術では「神の手」を持つと称された。
麻沸散を使い人を眠らせ、切開し、内臓を取り出して治療したと言われている。
その頃、天下統一を図っていた曹操は、激しい頭痛に悩まされていた。
それを華佗は、わずか数鍼で治してしまう。
曹操は腕に惚れ込み、典医にと望んだが、華佗はそれを望まなかった。
「世に救うべき患者は曹操だけにあらず」
曹操はひどく怒り、華佗に追っ手を放つ。
「丞相のもとに戻れ。さすれば栄耀栄華は欲しいまま。
丞相の典医になれば、世の民も称えよう。
華佗こそ、天下の曹操を救った神医であると」
華佗は問う。
「断れば」
丞相に背く者、死あるのみ、の答えを聞いて華佗は笑う。
「さらば民は曹操をこう覚えるべし。
曹操は世の苦しみを救うべき華佗を殺めた愚か者、と」
まさにその時太陽が地上の風を吸い込み、こつぜんと天穴が現れた。
華佗は笑い声と共に、天穴へと消えた。

遠い百年の後の世、その世の王妃に魔の手が伸びるとき、ふたたび天穴が開く。
王妃は首を切られ死に瀕するが、伝説の名医華佗は天穴よりあらわれ、「神の手」と称されたその手技を使い、血の管をつないでそれを治してしまう。
その後華佗は、菊茶を高麗王妃にすすめ、その効用により、解熱、鎮痛、傷の腐敗を防ぐ。
王もまた曹操のごとく華佗のその腕に惚れ込み、典医にと望むが、華佗はそれを望まなかった。
すると、王に仕える武将は、華佗を天に返すべきだと進言する。
王はそれを聞き入れ、華佗は天穴へと一度姿を消すが、武将の信義の心に打たれ、みたび姿を現し、その後高麗にとどまる。




今日は、村の子どもらにこの話をした。
明日は樹の回りに、黄菊を植える。
話を聞いた子どもたちが、手伝ってくれるという。

お話を聞いて、私が華佗なのか、と尋ねてきた子どもがいたので、華佗ではないわ、と答えた。
華佗の学子なんだよね、とどこで聞いたのか答えた子がいた。
この村に来たときに言ったことを、大人の誰かが話したのだろうか。
そう思っていてもらおう。
華佗がどうやって針を打ったか、血管をつないだか、曹操がどんな風に怒ったか、武将はどんな人物なのか、子どもたちは次々に尋ねてくる。
夢中になるほど面白く話すことができただろうか。
子どもたちが大人になっても覚えていて、自分の子どもに話すほどに気に入ってくれますように。
黄菊を絶やさぬようにしてくれますように。




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# by kkkaaat | 2016-05-09 22:34 | ウンスノート【シンイ二次】 | Comments(10)

二次小説。いまのところシンイとか。
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