筆記



【シンイ二次】颶風27(終)




「平壌まで、こうやってのんびり行くの?」

ウンスは馬の背で、チェ・ヨンの腕にすっぽりと抱きこまれるようにして、
揺られている。
曇りの春の昼まえの柔らかい日差しだけでは、まだ肌寒いが、寄り添っていれば温かい。
チェ・ヨンは、ウンスの肩に顔をもたれさせるようにして、半分よりかかっている。

「あなたに、話を聞かねばなりませぬ」

時間はいくらあってもよい、とチェ・ヨンはつぶやくように言う。
まず兵営に行って、馬を一頭余計もらったほうがいいんじゃない、
とウンスは言う。
馬二頭では、話しづらい、とチェ・ヨンがにべもなく断る。

「そうたいして長い話でもないわ」

ウンスが控えめにそう言うと、チェ・ヨンが黙って、ウンスの手を握り締めた。
よくぞ、そうつぶやいて、チェ・ヨンは口を閉じた。
よくぞご無事で、なのか、よくぞお助けくださった、なのか。

ウンスは振り向いて少しだけ頭を後ろに傾けて、
肩ごしにチェ・ヨンの口元へ自分の唇を近づける。
少しだけぼんやりとした顔のチェ・ヨンに触れると、チェ・ヨンは
ゆっくりと冬に陽が上るほどにごくゆっくりと、微笑みを見せた。
そのチェ・ヨンの微笑みの後ろから、雲が切れて、
これから咲こうとする花を温める陽射しがさしこんでくる。
チェ・ヨンは今度は自分か顔を前にずらして、静かにウンスの唇を味わった。


「テホグン――!」

遥か遠くから、大声で呼ぶ声がした。
ふたりは目を開けて、声のした方向に顔を向ける。

「テマンだわ」

豆粒のように小さいが、あの頭でテマンだとわかる。
ウンスが、おおーい、と大声で呼び返して手を振るとと、顔もよく見えないが、
テマンが遠くで躍り上がり、こちらに向かって全速力で走り出すのがわかった。
馬がウンスの声に驚いて、二、三歩駆けるように脚を運んだ。

「平壌に向かったんじゃないの?」

ウンスがチェ・ヨンに尋ねると、昨晩の嵐で俺に何かあってはと
心配して引き返したのでしょう、と言いながら、テマンを見る。
あ、泣いてる、と言ったウンスの声も、涙声だった。

「ねえ、わたしお腹すいちゃったわ」

ウンスがチェ・ヨンの方を振り返らずに、手の甲で顔を拭いながら、
照れ隠しなのか、そんなふうに言った。
俺もです、とチェ・ヨンがひどく驚いたように言った。
まるでたった今、空腹にようやく気がついたとでも言うように。

まずは三人で、飯屋に言って、話はそれからです、とチェ・ヨンが言うと、
わたし最後に食べたのは、米の干したやつ、まっずいの、とウンスが話す。
なぜそのようなものをと怪訝そうに尋ねるチェ・ヨンに、
ウンスは、ろくなものを食べなかったわ、全部聞かせてあげるから、とそう言って、
もう半分ほどまで近づいてきているテマンに、

もう一度大きく手を振った。


(終)



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by kkkaaat | 2013-12-17 00:33 | 颶風【シンイ二次】
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二次小説。いまのところシンイとか。
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