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筆記



【シンイ二次】白花 3

白花のおまけです。なんということはない、二人の宿屋の情景。

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「そこに」

チェ・ヨンはウンスの口のあたりを手で示す。
ウンスが匙を握ったまま、頭を横に傾けると、チェ・ヨンは自分の口の端に
触れて、ここについております、と小声で言った。
うなずいて、ウンスが反対側の口の横を袖でぐいと拭うのを見て、
チェ・ヨンが違います、反対です、ともう一度自分の反対側の口の端に触れながら
顔をしかめて懐から布を取り出してウンスに渡す。
ウンスはそれを受け取って、ようやく飯の粒がついた口の端と頬を
きちんと拭うことができた。

にっこりと笑って、これでいいかしら、と言うウンスにチェ・ヨンは
顔を横に向けながら思わず笑う。
それからおかわりをすすめる。

「いくらわたしでも、そんなには食べられないわ」

顔の前で手を振って、それと同時に首もぶんぶんと振って、
ウンスが断ると、チェ・ヨンはそれでは、と残りの飯を全部自分の椀に
よそって、珍しくがつがつとかきこむように食べる。

「あ、行儀が悪い」

ウンスがからかうように言うと、参月分ですから、とチェ・ヨンは
ごくりと喉を動かしながら言って、それから、

「それに、あなたほどではない」

と付け加えた。
ウンスは足を投げ出して、腹をさすっているところで、
足を子どものように投げ出している。

「あなたが腹をさすっているのを見るのは…久しぶりだ」

そう言われて、ウンスは少し申し訳なさそうな、苦笑いを浮かべて、
もう一度遠慮がちに腹を撫でた。
チェ・ヨンは綺麗に飯粒をさらうと、汁を飲みほし、皿に一つ二つ残った
肴を箸でつまむと、それもきれいにたいらげた。

「それで」

ことり、とチェ・ヨンが箸を置いた。
ゆっくりと、膳を自分の脇に寄せて、身体の前に空きを作ると、
あぐらの膝に手を置く。
深く息を吸う。
それから、黙ったまま組んだ脚と脚の間に、頭を深く下げた。

「この度は命をお救いいただいたこと、かたじけなく御礼申し上げる」

ウンスはチェ・ヨンのあらたまった態度にひどく慌てた。
だらりと伸ばしていた足を身体の下に折りこんで、
姿勢を正しながら、え、え? と声を出す。
それから身体の前で激しく手を振って、チェ・ヨンの肩を押して
姿勢を戻させようとするが、その身体は痩せたとはいえ固く、
ぴくりとも動かなかった。

「ね、ちょっと。そんな。やだ、水くさいじゃない。ねえ」

ちょっとテマンが何を話したか知らないけどやめてよ、ね、
夫婦なんだから、助けあい、助けあい!
とウンスがぐいぐいと両肩を押し戻そうとしていると、
チェ・ヨンは急に身体を起こして、ウンスの左右の手首を、
それぞれ自分の手でつかんで止めた。
それからその手を、静かに自分の前に下ろす。
ウンスは自然と、チェ・ヨンと額を付き合わせるような格好になった。

「夫婦とて、命を救われれば、礼を言う。当たり前のことです」

チェ・ヨンはそう言って、静かにもう一度頭を下げた。
ウンスははにかんだように笑いながら、チェ・ヨンのつむじを見て、
それから、こくりとうなずき返したが、赤くなった頬で、
そんなあらたまって言われると照れるわ、とつぶやいた。

チェ・ヨン少し顔を上げて、黙ってしばらく考えこんでから、口を開いた。

「あなたはあいかわらず…俺のことばかりだ。自分のことは、二の次で」

眼の奥まで突き通るようなチェ・ヨンの強いまなざしが、
ウンスの目の底を見つめる。

「俺が心配しても、気にもとめぬ」

そう言いながら、苦しげに目が細くなった。
急に口が抑えられぬようにひしゃげて、それを隠すように
ウンスに近づいてかぶさるように重なった。
何度か吸い付いて、一瞬途切れた瞬間に、震えるような息が
チェ・ヨンの口からもれる。
それから、チェ・ヨンの顔がうつむいて、ウンスからゆっくりと
離れようとした。

それを追いかけてウンスの顔が前に倒れ、チェ・ヨンの額に
ウンスの額が押し付けられる。
近すぎて目は見えないが、チェ・ヨンからはウンスの口元が
優しく微笑むのだけが見えた。

「ちゃんと、気にしてるわ」

すごーく気にしてる、本当よ、心配させてごめんね、
とウンスが握られたままの手首をひねって、指先だけで、
チェ・ヨンの手首を撫でた。

「それでも無理をするから、たちが悪い」

チェ・ヨンが小さなため息と同時にそう言うと、
私のお守りは大変よって言ったじゃない、
とウンスが口を尖らせるのが見えた。

あなたのようなお人は、小さくして懐にでも入れておければ
少しは安堵できるでしょうに、とつぶやいて、チェ・ヨンは目を閉じて、
擦るように額を押し当て、鼻ずらをウンスにすりよせる。

「うん?」

ウンスがチェ・ヨンのしぐさに、なあにと尋ねるように、小さく声を出す。
目をつぶったままのチェ・ヨンの唇がウンスの頬をかすめる。
手首をつかんでいた手が緩んで、外れた手がそのまま、ウンスの頬を
包みこんだ。
うつむいていたはずの顔がすくい上げるように、ウンスの唇をとらえる。
頬に当たった指先が燃えるように熱い。

「やっかいだ」

チェ・ヨンがかすれた声でつぶやく。
頬に当てられた手が小さなウンスの顔をやすやすと自分の思う方へと傾けて
唇が深く重なる角度にする。
残りの手がウンスの手首からするりと逃げ出すと、そのまま腰へと
巻きついて、チェ・ヨンのもとへ強く引き寄せる。

「まったく、やっかいです」

持て余しちまう、とチェ・ヨンは胸の息を一気に吐き出しながら、そう言った。
わたしのこと? とウンスが尋ねると、いや、と答えながら首を振る。
いや、そうではなくて、とだけ言って、チェ・ヨンはそれ以上
説明をしようとはしなかった。

ただウンスを急に抱き上げると、床に運び、

「腹が満ちたら、今度は女です」

チェ・ヨンは悪びた言葉とは裏腹に、ひどく真剣な口調でそう言って、
ウンスを横たえたのだった。





ここで終わったら、ひ、ひんしゅく…?
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by kkkaaat | 2014-02-13 20:00 | 短編【シンイ二次】
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二次小説。いまのところシンイとか。
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